大久保ニューの【美のぬか床】 第15回

“シワ”を恐れるゆえの真顔はホラー!? 劣等感で表情をなくした女への「顔ダンス」のススメ

2014/07/27 19:00

 そして、一番納得がいかないというか、腑に落ちないのは「ちっともダンスした気分になれないよ?…」ということだ。実際、セミナーでは音楽に合わせて実践するようだが、DVDが付いているわけではないので不明瞭だ。Amazonのページでは、おきゃんママさん本人が顔を動かしている動画があるものの、「この状態で5秒キープ」とか言ってるし。ダンスミュージックとマッチするとは到底思えない。「顔で踊りたい☆」というのが、一番の購買理由だったので、そこはガッカリしてしまったのは事実。ひと通りの動きは覚えてしまった今も、念願の「顔ダンサー」になれた実感はない。

 不遜にもケチをつけるようなことを書いてしまったが、私はこの本と出会えてよかったと思っている。というのも、大事なことを思い出したのだ。「顔で一番大事なのは表情筋」だということを。

 本当に昔話で恐縮だが、20年ほど前の話。当時、私は専門学校生で、顔面はアトピーと吹き出物で大変な状態だった。ケロイド状に腫れ上がったアトピーは、モウレツにかゆく、地腫れした吹き出物は、たまらなく痛い。それらは、顔面だけでなく、心をも荒ませ、自尊心やらオシャレ欲やらをズタボロにしてくれた。「どうせこんな顔だし……」という卑屈な気分に乗っ取られていた私は、ある日、友達からもらった焼き増し(久しぶりに使った言葉!)された集合写真を見て、驚愕してしまった。顔面が荒れまくっているのは、イヤというほど知っていたが、驚きポイントはそこじゃない。私の顔面に表情がなかったのだ。

 「この死人のような顔が……私の顔!?」。周りの友達が笑顔で写っているだけに、私の死人っぷりったら。写真に撮られた時、決してつまらなかったワケではない。日頃の卑屈な感情が、顔にこびりついてしまっていたのだ。そして気がついた。私は毎日毎日、しつこいくらいに鏡をのぞき込んでいるが、それは「今日のアトピー度チェック」や「吹き出物の数を数える」とか、顔の表面を見ていただけだったのだ。「葉を見て森を見ず」のごとく、自分がどんな表情をしているかなんて、考えたこともなかったのだ。

 こんな顔、イヤだ!! そこから私の表情活性化運動が始まった。鏡の前で笑う練習をするようになったのだが、どう見てもケロイドだらけの化け物フェイス。本当に楽しい笑顔を作るのは困難だった。どうしよう……と悩んでいたある日、CDに合わせてノリノリで歌っていた瞬間、思いついた。「鏡に向かって歌えばよいのでは!?」。実践してみると、歌詞に入り込めるため、表情を作りやすい。お気に入りのアイドル気分で歌っているうち、笑顔も、せつな顔も、はにかみ顔もできるようになった。もしも他人に見られたら、その人を殺してから舌を噛み切りたくなるほど恥ずかしい行為だったが、私は毎日毎日、鏡に向かって歌い続けた。そして後日、一緒にカラオケに行った男子から「本当に楽しそうに歌うね」と言われた時、涙がにじみ出るほどうれしかった。「やっと人間に戻れた!」って気分だった。


『たるみが消える! 顔ダンス』