[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」4月7日号

加齢への肯定を「品」に置き換えたことで戦場と化した、「婦人公論」の大誤算

2014/04/02 21:00
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「婦人公論」4月7日(中央公論新社)

 今号の特集は「大人こそ身につけたい『品のある美しさ』」です。リードには「大人の魅力は生まれや育ちや顔かたちに由来するものではありません。その人の選ぶ生き方とちょっとした心がけが、たたずまいを美しくするのです」とあります。「品」を語りたがる、それこそ人が年を取った証拠ではないでしょうか。届きそうで届かない、掴めないイチゴのようなもの、それが「品」。若さを失い、外見の美を失っても、私たちには「品」がある。そう考えると「品」って、女の最後の砦のようです。さて、そんな女のドモホルンリンクルたる「品」ですが、では一体どんなことを品と表すのかといえば正直よくわかりません。今号の「婦人公論」でそれを解説してくれるのが、作家の曽野綾子センセー。これはまた事件の匂いがします。

<トピックス>
◎特集 大人こそ身につけたい「品のある美しさ」
◎オノ・ヨーコ×杏 どん底からのあがきが、人に力と知恵をもたらす
◎緊急特集 100万人の“自立難民”「ひきこもり」、出口は必ずある

■曽野綾子式ブーメランに悶絶

 特集の方向性を決める冒頭のインタビューは、曽野センセーの「世間の流行は疑ってみるくらいがいい」。キャッチには「まといたいのは、魂の香気」とあります。曽野センセーといえば某週刊誌で「女性は出産したら会社を辞めるべき」と唱えて大炎上を起こしたことが記憶に新しいですね。センセーのいう「魂の香気」がある人とは、「たたずまいに魂の個性、『香気』がある方」のことで、その香気を身につけるには「自分で考え、自分で決断し、人の非難を恐れず静かに実行する。その積み重ね以外にない」のだそうです。またそのために「傷を負うことをも覚悟のうえで行動する」勇気が必要になるそう。

「私は勇気とは、謙虚に自分のしたいことを持ち、相手にも希望を許すことだと思っています。あるいは自分で判断しつつも、もしかすると間違いかもしれないという疑念に耐える。その勇気が人間の香気を作っているように感じます」
「人はそれぞれの好みに従って生きるほかありません。そして、好みを生かして生きていける社会こそ、豊かで自由でありがたいものだと私は思っています」


 「品」「魂の香気」そして「勇気」。他者からの非難に負けず確固たる信念を持ち、一方で自分の考えが本当に正しいのか社会状況などと照らし合わせる謙虚な気持ちも忘れない。素晴らしいです。これぞ「品」です。ですから、曽野センセーにお願いです。たとえ“産休や育休のような制度を利用する女は会社に迷惑をかけていることを理解しない自分本位な人間である”と非難しようとも、働きたいという気持ちを持つ女性を「勇気がある」とお認めください。そして「出産したら女は会社を辞めるべき」という考えが果たして絶対的に正しいものなのか、疑念を抱いてください。

 という筆者のささやかな願い虚しく、流行は追うな、人の真似はするな、平和の意味もわからないのにピースサインはするななど、「品」というよりおばちゃんの愚痴に終始している曽野センセー。そしてそんなおばちゃんの愚痴に呼応していたのが、読者体験手記「憧れの人の素顔に仰天!」でした。「美人でお上品で憧れていたあの人が実はお風呂でオシッコOK派だった」「『女性は見えないところのオシャレが大切』と言いながらトイレのフチ裏と冷蔵庫の中がとんでもなく汚かったセンパイ」など、お上品の仮面に隠された知られざる素顔を暴きまくっていました。

 「品」それは、追えば追うほど、語れば語るほど「下品」になる恐ろしき魔物。そのことを身を挺して教えてくれた諸先輩方に感謝を……。

婦人公論 2014年 4/7号 [雑誌]