「AneCan」の卵子凍結特集、アラサー当事者をスルーした親の小言のような“正しさ”
しかし驚いたのは、「和食のときは軟水を合わせて」とか、パウンドケーキの日は「硬度が高めでも飲みやすいHILDON」とか、デニッシュに合わせた「FIJIウォーターは飲みやすい」など、朝から水をソムリエしている方がいらしたこと! また、「週一はカフェで朝ごはん」という言葉に添えられた、ラテ越しにMac Book Airを“それっぽく”映した写真には、「本当にこんなことする人いるんだ~! 安藤美冬みたい!!」と大興奮。ほかにもカトラリーの下に紙ナプキンを敷くとか、皿はことごとく白など、「AneCan」におけるオシャレ感が一目瞭然な企画でした。
■一体誰のオピニオンリーダー!?
その後の重め特集「『卵子凍結』、本当のところ」に、アラサー筆者も興味津々。昨年末に、日本生殖医学会で卵子凍結が認められたという事実だけは知っていましたが、どんなスケジュール? 価格は? などと知らないことばかりでしたので、貪るように読まさせていただきました。内容はと言いますと、凍結までのスケジュールやコストがわかりやすく説明されている一方、肝心の、「凍結後もしも産みたくなった時どうすればいいの?」といったことには一切触れられていません。落丁版を買ってしまったのかと指を舐め、ページをもう一度繰りましたが、そうではないようです。「とりあえず凍結しとけばいいんじゃない? その先は考えるな」というか、「産めることになった人のことなんてどうでもいいですよ~、ググって調べてね~」ということでしょうか。極めて今風のドライな対処です。導入部は無料で読め、その先は有料というエロ漫画のようなもどかしさを激しく感じましたが、大変ためになる今話題のネタであることは違いません。卵子凍結という少々重たく思える話題も、この尻切れとんぼ的な掲載で「とりあえずやっとく?」と軽い気持ちで挑めそうです。
が、しかし。「とりあえずやっとく?」と思いながら次ページをめくると、「卵子凍結をめぐるさまざまな声集めました!」と、女性のオピニオンリーダーとして活躍する方々からの、「簡単に考えちゃ、ダメ。ゼッタイ。」的なメッセージが目白押しです。読む人の心の動きを、さすが「AneCan」、よくわかっています。野田聖子さんから始まり、勝間和代さんや東尾理子さんなど、アネサーの目指す女性のロールモデルにはまったくならないであろう方々、産婦人科医、独身女性や子ありの男性といったさまざまな立場の方々が、一言モノ申しております。それは、「産むだけじゃなくて育てなくちゃダメなんだよ! 高齢出産の育児は大変よ!」「卵子凍結はお守り程度に考えて、今妊活しようね!」「子どもを産むだけが幸せじゃないよ!」の三点に集約されます。この方々の意見は、親の小言のように正しく、一般的なのでしょう。しかし、渦中にいる人間にとってはまったく親身に聞こえないので、スピードラーニング並みに聞き流せます。
子だくさんの女性や、高齢出産経験者、産婦人科医の意見はわかった。子どもがいなくても幸せだっていう意見もわかった。でも、子どもを作ることが難しい年齢になってしまった人の声を聞かせてくれよ! 今、同じくアラサー、しかもアラフォーに近づきつつある中で、「出産どうしよう」って考えていそうな「AneCan」モデルや姉レディの声を聞かせてくれよ! というのが、アラサーの「AneCan」世代の1人としての筆者の熱い思いです。
(白熊春)