[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」1月22日号

「婦人公論」の“みのもんた×林真理子対談”で、寒すぎる夫婦愛コント

2014/01/19 19:00
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「婦人公論」1月22日(中央公論新社)

 2014年「婦人公論」初め、まずは脚本家・大石静先生のこんな含蓄ある一言からご紹介します。化粧品を“浮気”すると肌がイキイキするという話から、

「なんでも慣れてしまうと、そのよさが見えなくなるのは、男と女も同じだと思う。ひとりのパートナーだけ見つめていると、よさも悪さも慣れてしまう。美しい顔も気立てのよさも、稼ぎのよさも、慣れてしまうとさしたる価値を感じなくなる」

 つまり、同じものばかり使っていると、本来の良さを見失ってしまう。先生曰く、浮気をした男女が配偶者に優しくなる現象は罪悪感からだけでなく「違う異性を深く見つめたことで、日頃気づかなくなっていた、配偶者の魅力もあぶり出すから」なのだそうです。なるほど、これは2014年も「婦人公論」は、夫婦関係のひび割れさえも人生のスパイスとして楽しむという所信表明と受け取りました。「欲しいのはときめきだけで、実際は浮気なんてしませんよ……」というおためごかしはナッシング。残りの人生を数えたら、欲望に正直にならずにはいられません。「人間とは、そういう勝手なものなのだ」という大石先生の言葉が、居酒屋に貼ってある“親父の小言”ばりに胸を打ちます!!

<トピックス>
◎特集 始めよう幸運に愛される人生
◎五木寛之 誰かに頼ろうとする甘い考えは今すぐ捨ててしまいなさい
◎林真理子×みのもんた 妻を喪った男はなぜ迷走するのか?

■「自立」という言葉の危うさ


 堂々たる「浮気のススメ」に続きまして、今号の特集を見てみましょう。題して「始めよう 幸運に愛される人生」。年始恒例の幸運呼び込み企画です。著名人たちによる「生きる力が湧いてくる心のことば」「今年、『眉』を変えれば運命が開ける!」「美文字で気持ちを伝える『寒中見舞い』レッスン」など即効性のありそうな幸運メソッドの中で、ひときわじっくりジワジワくるのが巻頭インタビュー「五木寛之 誰かに頼ろうとする甘い考えは今すぐ捨ててしまいなさい」。「未来に不安を抱きながらも、体力、気力、能力は衰えず、自立の思想を持った新しい老人像を確立する」という近著『新老人の思想』(幻冬舎)をベースに、老人の幸せについて語っています。

 日本は今、世界から注目される2つの問題を抱えていると話す五木氏。「その問題とは、使用済み核燃料の処理と、超高齢社会の行方。(中略)どちらも戦後の日本で素晴らしい働きをし、大きな成果を上げ、しかしながら時間の経過とともに、その存在が社会の重荷になっている」。“お年寄りを大切にしよう”という揺るぎない社会規律が少しずつ変容していると氏は感じているようで、「若者が集まるコーヒー店などに高齢者が足を踏み入れると、すーっと空気が冷める。露骨ではないにしろ、いわば『嫌老感』とも呼ぶべき風潮が世の中に広がりはじめています」とのことです。

 老人が弱者として保護されていた時代は過ぎ、このタイトル通り、本当に誰にも頼れなくなる時代がくる――それは老人だけでなく誰もが薄っすら感じていることではないでしょうか。「嫌妊(婦)感」や「嫌子(ども)感」、「嫌オバ(さん)感」はもっとあからさまにありますし、テレビでシングルマザーの貧困問題を扱えば「勝手に結婚して勝手に出産して勝手に離婚したくせに」という視聴者からのお叱りFAXが送られてくるご時世。「弱者」はレース化され、一言でも弱音を吐けば「甘えるな」と攻撃されます。

 五木氏は「年金に頼らない経済的な基盤」「健康な肉体」「精神の自立および死生観の確立」の3つを支えとして新しい幸福観を見出すべき、とまとめています。しかし今最も怖いのは、誰にも頼れなくなることではなく、環境や状況により何かに頼らざるを得ない人にも自立を強要する風潮ではないでしょうか。多くの人々が意識的に自立を考えている世の中だから余計に、松葉杖をつきながら歩こうとしている人から「自立しろ」と松葉杖を奪う正義がまかり通るのかもしれません。すべてをなぎ倒すくらい強くなるか、誰に何を言われても気にしない図々しさを身につけるか。この世を幸せに生き抜く力は、そのどちらかにかかっているようです。

婦人公論 2014年 1/22号 [雑誌]