自分を磨いて待ってます――「steady.」の新理想像「可愛い大人OL」が怖い!
しかし驚きなのは、男性へのギフト。「日頃の感謝を表す」ためとして、3,000円のギフトが紹介されると、次はいきなり「ステディな彼へ」の10,000円のギフト、「外さない本命へ」の30,000円のギフト、「大奮発して選ぶ」50,000円のギフトと、値段が倍々以上に膨らんでいきます。自分の服もそんな金額を使わないのに、50,000円も彼氏に使う「steady.」OL……。そこに本命の彼氏をつなぎとめたいという思いが感じられ、なんだか涙ぐましい気持ちに……。
別に、「steady.」に限ったことではありませんが、バブルの時代に「アッシー」だの「ミツグくん」だのがいたというのが、ファンタジーにしか思えないほどの女子の価値の凋落っぷり。高価な品をあげても、離れかけた心をつなぎとめられないというのは、男女を逆の立場に置き換えればすぐわかりそうなものですが……男に貢がれ愛されるだけでなく、男と対等な立場で渡り合うのが、「steady.」の言う「大人」なのかもしれません。
■自分にお金を使わない20代女子
最近、「1カ月コーディネート」という女性誌定番企画の名称を、どこかが商標を取ったといううわさを聞きました。だからかはわかりませんが、今月は「1カ月」ではなく「きれいめスイートOL絵梨佳のあったか3カ月着まわし」という特集がありました。スタートは12月7日で、終わりは3月6日まで。その3カ月を、シャツ3枚、ニット3枚、カーデ1枚、カットソー1枚、スカート3枚、パンツ2枚、キュロット1枚、ジャンパースカート1枚、コート2枚という基本アイテム+ダウン、ニット、小物などの買い足しアイテムで乗り切るそうです。誌面で見ると、正直、本当に3カ月持つのかと不安を感じるラインナップです。
普段はこんなにも慎ましい生活を送っているのに、彼氏にはどーんと50,000円もつぎこまなければいけないなんて……。「自分にお金を使わない」という「steady.」の特性は、読み物ページに、読者の“趣味”や“娯楽”を感じさせるページがないことからもわかります。今月の読み物ページは、大掃除特集や占い、自己啓発めいた「魔法の言葉」特集や、男子ウケを狙った料理ページなどに終始し、その向こう側には、まだ見ぬ旦那さまの姿しか見えてこないのです。しかし「自分を磨いて待ってます」というのは、一見落ち着いた大人の女の姿勢にも思えますが、実は自分のことしか考えてないようにもとられかねません。
「結婚だけが自分の幸せ」と思っている20代女子たちの脳内を見ているような「steady.」。「もっと、男や自分以外のことにも目を向けて見ては?」なんて言いたくもなりますが、「steady.」はその名の通り、誰かの「ステディ」になるための雑誌。しょうがないと言えばしょうがないんですけどね……。
(芦沢芳子)