[女性誌速攻レビュー]「日経ウーマン」12月号

ミニワンピ姿の新入社員を断罪、「日経ウーマン」マナー特集が小姑の告げ口状態

2013/11/14 16:30

 にもかかわらず……! 本誌では、働く女性に対して、「おもてなし力」を身に着けると「好印象になれる」「内面からの美しさが得られる」として、「おもてなし力」を大プッシュ。「相手に対して何をできるか考える」のではなくて、「自分の印象を良くする」「内面からの美しさを得る」ことが目的になっているのです。これぞまさに深沢氏が警鐘を鳴らす“おもてなしの形骸化”では? 「日経ウーマン」的「美人」になるために、マナーや「おもてなし力」を身に着けようとする行為は果たして本当に美しいのでしょうか。

 「外見でなく性格で自分を判断してほしい」と殊更に主張する人の性格が良いと思えたためしがないのと同じで、「大事なのは外見ではなく内面の美しさ!」と言い張って内面を磨く努力をしても、あざとさが透けて見えてしまうということを学んだ「おもてなし」コーナーでした。

■「マナー違反」を取り締まる告げ口大会

 同じく「マナー特集」の、「誰も教えてくれないケータイ&スマホのマナー」では、「デート中、スマホに夢中の彼。これってOK?」「SNS上で自慢話は許される?」という問いかけが。それに対する回答は「ほかの人といるときは、使わないのがマナー。他人と一緒にいるときにスマホを触ることは、コミュニケーションを拒絶していると思われても仕方のない行為」「自慢話と取られかねない内容は載せないのが無難。あらぬ誤解を招いたり、自分の印象を悪くしたりするケースも」というものでした。

 感じ方は人それぞれだし、自分といる時にスマホを触られるのが嫌なら、そんな彼氏とは別れればいい。SNS上の自慢話が不愉快なら、そういうアカウントを見ないようにして、自分も自慢を書かないようにすればいいだけの話。それをわざわざ「マナー違反です」と断罪するのは、生真面目な読者に「不愉快に感じているのは私だけじゃないんだ!」「マナー違反をしているあの人が悪いんだ!」と自らの正当性を確認させ、溜飲を下げてもらうためでしょう。


 「WOMAN読者は見た!驚きの『マナー事件簿』」も、マナー違反を犯した身近な人間をあげつらう告げ口大会になっています。「新入社員の女の子がひざ上15㎝以上のワンピースで出勤」「結婚式の披露宴に、フェイクファーを羽織りブーツ姿で現れた友人」「女性の上司が『冠婚葬祭用にワニ革の黒いバックを買ったの~』とうれしそうに自慢」などなど。

 これらの投稿の文末には、「マナー違反だと聞いたことがあったので、『脱いだほうがいいのでは?』とこっそり伝えました」「上司なので指摘はしませんでしたが、最低限のマナーは知っておいてほしいです」などといった、非常識な人間と対比させて自分の正当性をアピールするコメントが添えられていました。「日経ウーマン」でマナー特集がもてはやされるのは、正しいマナーを習得するのでなく、真っ当な人間としてマナー違反を取り締まることへの欲望の表れなのかもしれませんね。

『日経 WOMAN (ウーマン) 2013年 12月号 [雑誌]』