サイゾーウーマンコラム磯山さやか『ぽちゃモテ』のモテを探る コラム 「タレント本という名の経典」 磯山さやか『ぽちゃモテ!』に隠された、女に嫌われないモテ方の極意 2013/11/10 21:00 タレント本という名の経典ぽちゃモテ!磯山さやか 一方の女性陣のコメントは、1人を除いて、ぽちゃについてはスルーし、もっぱら内面に触れたものが多い。「気配り名人」「人の悪口を聞いたことがない」「自然体」「人のいいところを探すのがうまい」などがそれである。しかし、これらの美点は、体型より個人の資質の問題である。痩せていても気配りができる人はいるし、ぽちゃでもできない人はいる。 ぽちゃについて触れた唯一の女性は、モデルの中村アン。「ひまわりみたいな人」「頼もしい先輩」と磯山を称えた後で、中村は「ぽちゃコ文化を日本に浸透させて、日本男子の細身好きに革命を起こしてください」と結んでいる。このコメントから伺えるのは、中村は自分は太るつもりはない、ということである。ほかの女性たちも誰一人として「私もぽちゃになりたいです」とは述べていない。評価はしつつも、なりたいとは思わない。ここにぽっちゃりをめぐる女心の不思議がある。この言行不一致は諸所で見られる。例えば「CanCam」もぷに子を持ち上げながらも、同じ号でダイエットについて特集し、依然として細いモデルを起用し続けている。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「太ってきた芸人」を放送した際、15キロ太った黒沢に対して、女性の観客は「かわいい」と声援を飛ばしたが、「なりたい?」と宮追が訊ねると、しーんとした。この「ねじれ」は一体どこから来るのだろうか。 そのヒントとなるのが、『ロンドンハーツ』(同)においての「有吉先生のタレント進路相談室」だった。このコーナーは、タレントの方向性に悩むマネジャーが、タレントを先細りさせないためにどうしたらいいのか、有吉弘行に相談するものである。有吉の答えよりも、マネジャーが語ったダイエットの意義についての見解に、目から鱗が落ちる思いだった。磯山のマネジャーは磯山にダイエットさせた理由を「女性の共感を得るため」と語っていた。熊田曜子のマネジャーも「女性の支持を得るため、ダイエット」と語っていたので、業界では「ダイエットで女性からの人気を得る」のは定説なのだろう。 なぜ痩せれば、女性から人気が出るかと言うと、ダイエットは容易でないからである。食欲を我慢することは難しい。年齢が上がれば代謝も落ち、ますます痩せにくい。仮に痩せたとしても、気を抜けばリバウンドする。痩せて、かつそのスタイルを維持するには、相当ストイックに取り組まねばならない。見た目だけでなく、その克己心を女性は尊敬する、ということだろう。 あの女性タレントはすごい。ああなりたいと思う。そういう感情をひとまとめに表現する場合、用いられるのが「好き」という言葉である。そして、女性が女性に向ける「好き」は大別すると2種類あり、1つ目がああなりたいと思う「尊敬」、2つ目が良く言えば「親しみ」悪く言えば「軽い見下し」である。ダイエットに失敗した磯山は、前者の「好き」の獲得には失敗したが、後者を見事手に入れた。ダイエットの失敗は偶然かもしれないが、男ウケから女ウケへのキャラ変更は意図的なものだろう。 前のページ123次のページ Amazon 『ぽちゃモテ!』 関連記事 小島慶子の「コミュニケーション術」から読み取る、「女に嫌われる女」像母と娘のいびつな相思相愛――「女の賞味期限切れ」を宣言した西川史子の危うさ自称「おっさん」の水野美紀に見る、男も女も油断させる巧妙なハニートラップ「結婚とはあきらめである」を体現する、市川海老蔵の良妻・小林麻央のB級力女を病ませる「結婚してもらえない」問題、菅野美穂が用いた“プチ圧力”のススメ