コラム
深澤真紀の「うまないうーまん」第3回

「同じ女として」「同じ母として」は、女性の多様性を制限する魔の言葉

2013/10/05 16:00

 私にとってのフェミニズムは、「女というだけで差別を受けないための思想」という程度のもので、男だって差別されないほうがいいと思っている。「女」「妻」「母」も「男」「夫」「父」も、それぞれの「らしさ」なんて、個人の趣味くらいに思えばいいのだ。大事なことは自分の思う「らしさ」を他人に強要しないことと、他人の思う「らしさ」を強要されないことだろう。

 仕事をする女性がメディアで取り上げられる時に、その女性が“妻”であるか、そして“母”であるかを必ず聞かれ、重視されることである。そして、当の女性自身も「女として、妻として、母としての視点で仕事をしたい」などという言い方をしがちである。もちろんそういう生き方や仕事が向いている人はそれでいいと思うのだが、女性が「女」「妻」「母」という視点と関係ない生き方をして、仕事することも、とても大事だと思うのだ。

 そもそも自分のことを絶えず、「女」か「妻」か「妻でない」か「母」か「母でない」かと意識し続けているのはしんどい。私自身は、自分のことは、「旅と漫画が好きな働く中年」くらいの認識でいることが多い。「女」「妻」「母でない」ことをあまり意識しないほうが、気が楽だからである。

 さらに「母でない」からといって、好き勝手に生きて次世代に対して無責任でいていいと思っているわけでもない(子供のいない中年夫婦は、何となくそう思われがちである)。子供の頃、仕事しているんだか結婚しているんだかよくわからないんだけど、なんだかおもしろいおじさんやおばさんを話をするのが、私は好きだった。私も“社会の変なおばさん”として、社会や若い世代に対して自分なりに責任を持ちたいなと思っているのだ。

深澤真紀(ふかさわ・まき)
1967年、東京生まれ。コラムニスト・編集者。2006年に「草食男子」や「肉食女子」を命名、「草食男子」は2009年流行語大賞トップテンを受賞。雑誌やウェブ媒体での連載のほか、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系)の金曜コメンテーターも務める。近著に『ダメをみがく:“女子”の呪いを解く方法』(津村記久子との共著、紀伊國屋書店)など。

最終更新:2019/05/17 20:11
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