OLの平均給与に見た、ダサいとの呼び声高い「steady.」ファッションの存在意義
となると、手取りで年収300万円というのが、OLの中ではいかに高給取りかということがわかります。
むしろ年収100万円台の手取りで働いているOLさんだって、たくさんいるはず。派遣社員だとボーナスもでないし、社会保険、失業保険、住民税などを引かれた後の一カ月の手取りが16万程度と仮定しても、1年間で192万円。手取りの年収が200万円台のOLですら、結構裕福だと見なしてもいいのかもしれません。
もちろん、雑誌に登場する人はあくまでも例にすぎないので、どうこう言うつもありませんが、ファッションページでは、プチプラ、コスパなどの認識が徹底されている雑誌だけに、なぜこんな高収入の女性の例を出すのかと、違和感を感ぜずにはいられませんでした。
あらためて現代OLの平均収入を知ってから「steady.」を見ると、この雑誌の存在意義が浮き彫りになってきました。というのも、「steady.」に載っている服って、おしゃれを自称する同年代の女の子からしたら、「なんか野暮ったい!」とか「安っぽい!」とか思われていますよね。しかしそれは、職場で浮かない、でも誰からも可愛いと言ってもらえるような「失敗のない洋服」しか金銭的に買えないということなのではないでしょうか。
最近はほかのファッション誌でも「リアルクローズや、ファストファッションをうまく組み合わせて楽しむ」スタイルがよく提案されていますが、ベースとなる服は数万円もするものばかりが紹介されています。そんなファッション誌に追いてけぼりにされた女の子は、全国にたくさんいるはず。「steady.」は、そういった女性に向けたバイブルなのです。
よく婚活をする女性たちが「普通の旦那が見つからない」なんて嘆いていますが、女性の側の「普通」も、なかなか実現は難しいものになっているようです。みんなが思い浮かべてる「普通」 というと、女性は仕事を定時で上がれて、お気楽だけど年収は300万くらいはもらえて、夫になる人は600万くらいはあって、結婚したら妻は家に入って、旦那さんの給料だけで暮らして、節約をしつつマイホームを買う……そんな普通だと思われがちな女の一生が、「steady.」を読んでいるともはや普通でないことを思い知らされます。でも、そんな「普通」の生活も、普通に生きていれば手に入ると信じていられるのが、「steady.」読者の強さであり弱さでもあるのです。
(芦沢芳子)