顔面崩壊で「ツレがブスになりまして」!? 過換気症候群に陥った恐怖の夏
私は普段から、男の前で「ヘン顔」は「しない派」である。元の顔が別に美人でもないから、ヘン顔をしたところで何もギャップは生まれず、別におもしろくもなんともないと思うからだ。ヘン顔が出来るほど、心に「遊びや余裕」なんてないとも言える。私は己の顔に対して、常に「切実」なのだ。そんなふうだから男の前で、軽く屁をこくようなライトなノリで、ブスヅラなんてできないのである……だから。
「うちのダンナ、アタシのこの顔を見てどう思っただろう……」と、頭の中が真っ白になるのは当然である……真っ白……そんなふうに、だんだん頭の中が霞がかってきてモーローとしていたら、夫が、泣きわめく子どもらと一緒に私を車の中にブチ込んだ。「とにかく、救急病院へ行った方がいいから!!!!」車中、子どもらのギャンギャン泣きわめく声と、ウルトラマンのCDがガンガン鳴り響き、地獄状態のまま病院に移動、私は休日の朝っぱらから、病院のやっかいになるハメに陥った。
そんなわけで。適切な検査の結果、医師が下した診断は。
「過換気症候群だと思われますね」
……過換気症候群? 私はその時初めてそんな病名を知った。とりあえず、顔面麻痺ではなかった事にホッとしたが、しかし、過換気症候群というヤツが、実は「パニック障害のお友達」みたいな病気だと知って、私は心底ショックを受けた。なぜなら、自分は絶対そういうシロモノとは縁がない人間だと思ってたからだ。
「日々の生活で、何かストレスって、ありますか?」
医者にそう聞かれて、まず、いの一番に思い浮かんだ事、それは。
「……あああ~~……、まぁ、このトシで小さい子ども3人の世話って、かなりしんどいですねぇ~~~……」
自分がもう少し若かったら……体力気力ともに十分な女だったら、子ども3人の世話はなんとかやれてたかもしれない。しかし、44歳の今、5歳3歳2歳の相手をしていると、なんとなく「老体にムチ打って」感が否めない時がある。育児に振り回され、仕事もうまくはかどらず、四六時中イライラしたまんま、あっという間に、電光石火のごとく1週間がすぎてしまう、そんな、泣きたくなるような日々。私は一体、この先どんなふうに生きてきゃいいのか。顔面崩壊はもうこりごりだ。今、ここで何かを何とかしないと、本気でマズい事になりそうな気がした。このままでは、ロクなババァ人生が歩めないような気がしたのだ。
てなわけで「パンスト顔」は、一晩たったら、なんとか元の顔に戻っていた。本当に、心底ホッとした。そして。……今後、二度とこんな目にあわないために……人生のパンスト対策として、私はもっと「ずぼら・がさつ・ぐうたら」に生きようと思った。この言葉は、尊敬する詩人の伊藤比呂美さんの言葉である。ずぼら・がさつ・ぐうたら。そして「テキトー・行き当たりばったり・ま、いっか」この3つもここに加える事にした。テキトー・行き当たりばったり・ま、いっか。これらは、整体師の奥谷まゆみさんの本に書いてあった言葉である。パニックだの過換気に陥るような人は、こういう生き方が、なかなかできないらしい。
案外、無計画に生きてるようでいて、実は自分は常に、己に対して完璧を強いているような所があった。これは相当生きづらい。20代30代の頃は、それでもなんとかやってこれたが、40代になったら「あー、もう無理です、限界ですー!!」と、体が悲鳴を上げてしまった。その結果、顔がパンストの呼吸困難。「ツレブス」なんて、ほんと笑い事じゃすまされない。嗚呼、読者の皆さんも、是非、私のような目にあいませんよう……朝起きたら顔がパンストなんて、冗談じゃありません。生きづらい日々を送ってるなぁと自覚のある方、是非、これらの言葉を私と一緒に唱えましょう、ずぼら・がさつ・ぐうたら・テキトー・行き当たりばったり・ま、いっか。
顔面崩壊に片足突っ込んだが、こうでもしなきゃ気が付かなかった、人生って、そういうもんなんですかね。