[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

期待を裏切らない女・長谷川理恵の「仕事」ぶりが、ゲス魂を揉みほぐす

2012/11/04 21:00
(C)安彦麻理絵

 朝、新聞で「女性セブン」(小学館)の広告を見て、とってもウキウキ、うれしくなってしまった。何故なら「長谷川理恵『おむつ入れバッグに30万円』でブログ大炎上」という見出し。あの「ハリー・ウィンストン婚約指輪騒動」以降、なんとなく「なりを潜めてるな」と思ってたら、図太くまた復活してくれたのである。消えてるようで消えてない長谷川理恵。なんていうか、いつだってやらかす事がブレないというか、ちゃんと「理恵仕事」をまっとうしてる。世間の期待を裏切らない生き様である。

 ワクワクしながら、早速、一体どんなバッグを買い込んだのかネットで調べてみたところ、それは、「シャネル」のフリンジつきの黒のトートバッグであった。コイツがブログ大炎上の火種らしい。口角は上がっているが、目は笑ってない長谷川理恵に、よく似合いそうなクールでお洒落なデザインである。このバッグに今後、タオルやガーゼ、着替え、赤子のハナクソをほじくる綿棒とか、おシリふきや紙オムツが、シャネルのロゴが歪むぐらいに、パンパンに詰め込まれる事になるのだろう。

 ところで世間は、長谷川理恵のママバッグがどんなふうだったら納得してたのだろうか。ベネッセあたりの通販で売ってる「ママたちの声を聞いて作りました!!」みたいな、ああいうママバッグだったら「ブログ炎上」なんて免れていたかもしれないが……。しかしまあ、それでも結局「庶民派ぶってる!!」と叩かれるのがオチなのだろう。

 とはいえ、長谷川理恵は、いつもいい具合に私の「ブス魂」をくすぐってくれる。彼女は、私の中の「ブス」とか「ゲス」な部分を、気持ち良く揉みほぐしてくれる「あんま」のような存在なのだ。そんなふうだから、私は長谷川理恵の事を考えてると、なんとなく楽しい気分になってくる。「ああきっと、理恵が子どもにはかせるオムツは、ドラッグストアの中でも一番値の張る『パンパース プレミアムケア』なんだろうな……」とか、

「体型を戻すためにやっぱり、樫木先生のとこでカーヴィダンスをやるのかしら……?」
「赤ん坊が退院する時は、真っ白ビラビラの、ものすごい値段のベビードレスを着せるんだろうな」
「お受験対策はもうすでに念頭にあるはず!!」
「子どもを産んで、雑誌『VERY』(光文社)に乱入してくる可能性は高い!?」

……etc ……。私にとって「長谷川理恵という存在」は、よっぽど「滑稽」らしい。長谷川理恵に思いを巡らせてる時の私は、ニヤニヤと、まるで中尾彬のような表情で悦に入ってるのが、自分でもよくわかる。私はよっぽど、長谷川理恵が好きらしい。


 しかし、これが「内田恭子」となると、話は別になる。内田恭子も「ハイブランド好きな、カネのかかりそうなお受験ママ」という、長谷川理恵と似た系列の女だが、彼女の事を考えてると私はなんだか「暗い気持ち」になってくる。「子どもに『クロムハーツ特注のガラガラ』」とか聞くと、「……ああ、なんだかなあ……」と、虚しいような重苦しい気分になってしまう。しかしこれが、長谷川理恵だと多分「クロムハーツのガラガラって(笑)」となるんだから不思議だ。一体、何がどう違うのか、理恵と恭子。

 私が思うに、内田恭子は「高学歴、高収入、元女子アナ、男ウケがいい」等々、そんなソツのなさが私の中の「女的醜い部分」をジワジワと責めてくるようなのだ。もっとわかりやすく言えば「この人を見てるとなんだか劣等感にさいなまれる」「同じクラスにいたら、絶対友達になってなかっただろう」という、そんな存在なのである。だから、内田恭子の事を考えてると、私はだんだん陰鬱な気分になってくる。「ああ、どうせ完璧なお受験対策をやってるんだろうな……」とか、

「……どうせきっと、代官山あたりでママ友と、ステキなママランチ(以下略)」
「……そんでどうせ、絵に描いたようないいママっぷりを(以下略)」

 ……等々、妄想の随所に「どうせ」という単語が登場してきて、どんどん卑屈になっていくのだ。そして、ふと気が付けば、激しい妬みで「煮え湯を飲まされたような顔」になっている。まるで、ガラスの仮面に登場しそうな、マヤの台本を別のものに差し替える、意地の悪いブスみたいな顔……。内田恭子、「女の醜い部分を引き出すのに長けてる女」っていうのも、なんだかすごいもんである。

 ところで、話は変わるが。落ち着きのない子どもらとの、電車での移動にホトホト疲れ果てた我々夫婦は、いよいよ「車を買わなければ、やってられないのではないか」という境地に至った。それで、夫が今日、近所の中古車販売所に相談しに行ったのだが。子ども3人(チャイルドシート3つ付けなきゃって……)そして大人2人が乗れる6~7人乗りの乗用車の安いやつを探してもらって、そのお値段が30数万円。長谷川理恵のシャネルバッグと同じような値段である。これが、内田恭子だったら、虚しさに顔が歪んでいたかもしれないが、長谷川理恵だと、何故か「いや~~ウケる~~(笑)」ってなるんだから、……何なんだろう、一体。長谷川理恵、私にとってやっぱり、「滑稽」って事か。


最終更新:2019/05/21 16:26
『内田恭子の「ウチごはん」』
逆にきもちいい!