[TVツッコミ道場]

心のビッチから本物のビッチへ――常盤貴子がNHKで語った「ビッチ論」

2013/07/28 21:00
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『眉山-びざん-』/ポニーキャニオン

「テーマはビッチ」

 番組の予告スポットで常盤貴子がこんなことを言っていて、一瞬耳を疑った。しかも、Eテレの番組だ。

 常盤の「ビッチ」宣言番組は、7月18日に放送された『ミュージックポートレイト』。
<2人のクリエイターが、それぞれ選んだ10曲を持ち寄り、人生を語り合う……>(番組HPより)という、2人のゲストによる音楽系トーク番組で、ゲストの人生において大切な10曲を、音楽の原体験から思春期、デビュー、ブレイク、苦悩、現在といった人生の転機ごとにそれぞれ選んでもらい、トークする。

 常盤のお相手は、DREAMS COME TRUEの中村正人。そういえばドリカムの大ヒット曲「LOVE LOVE LOVE」は、常盤が主演した1995年のドラマ『愛していると言ってくれ』(TBS系)の主題歌だった。そういうご縁での組み合わせというわけだ。

 この番組は、ゲストごと2週連続での放送となっていて、この日は後編となる2週目の放送だった。「LOVE LOVE LOVE」は前編で2人ともしっかりと選んでいたようだ。ほかに、常盤はドリカムからもう1曲「愛しのハピィデイズ」、そして出世作となったドラマ『悪魔のKISS』(フジテレビ系)の主題歌「好きになって、よかった」などを、中村は映画『ベン・ハー』のテーマやチューリップの「青春の影」などを1週目でそれぞれ紹介していた。

 2週目の今回、中村はまず、<No.1の苦悩>というテーマで、宇多田ヒカルのデビュー曲「Automatic」を選曲。当時アメリカ進出を果たしたドリカムは、思うように結果が出せず、アメリカのレコード会社のスタッフに曲作りから外れろと言われたりするなどの挫折を味わった。


「真っ暗な気分で日本に帰ってきたら、宇多田ヒカルさんがいたわけですよ」

 と衝撃を語る中村。「うまい。ヒット曲の全てを持ってる」「それこそ最初の1、2秒でつかみます」など絶賛、「僕らが10年かかってやったことを、彼女は楽々やってのけたんですよ」とまで言った。そんな宇多田の存在があったからこそ、ドリカムも新しいステップに踏み出せた、というような秘話を語り、ドリカム愛の強さを節々に感じることができるエピソードが出てきた。

 一方の常盤も、ドラマ主演を続けていた時の疲弊や苦悩や、香港映画でのレスリー・チャンとの共演など、転機を語る。2人の貴重な話が続くのだが、「ビッチ」トークはまだ?

 と思っていた8曲目、番組の流れ的に常盤の30代に突入したところで、「この頃、彼女の心をわしづかみにしたのが、マドンナです」というナレーションが入った。常盤が語る。

「30代に入って、ちょっと攻めの気持ちになっていたんですね。なんとなく生きてるのよくないよね、みたいなこと思って」


 そして、

「テーマはビッチ……だったんです」
「若さでは行けない、“心のビッチ”になるにはどうすればいいんだろうっていうのを、結構考えていて」

“心のビッチ”。なんだか名言感ある言葉だ。そんな時に出会ったのが、マドンナの曲「MUSIC」だった。

「(マドンナの)常に攻め続けている姿っていうのは、やっぱりすごく刺激的で」

 と、マドンナに学んだビッチ感を語る常盤に、「で? どうしたんですか?」と、ビッチについて掘り下げてくる中村。「もう……あの」と言う常盤に、「いろいろね?」と水を向けると、常盤が言った。

「ありとあらゆる……」

 中村、爆笑。「ありとあらゆる」何をしていたかといえば、「シミュレーションしました!」。キリッとした感じで常盤が言った。

「妄想の中で、だいぶ悪かったですね、私は」

 イメトレみたいなものか。エアビッチ常盤。そのお陰で、苦手で避けてきた舞台の仕事に挑戦することができたのだという。

「30代になって“心のビッチ”を目指した時に、『何が来ても私怖くない』って思うその精神力の強さがないと、本物のビッチにはなれないんじゃないかって(思うようになった)」

 結局、常盤は“本物のビッチ”を目指しているのだろうか?
(太田サトル)

最終更新:2013/07/28 21:00
『眉山-びざん-』
ビッチキャラで売り込むのかな…