母と娘のいびつな相思相愛――「女の賞味期限切れ」を宣言した西川史子の危うさ
――タレント本。それは教祖というべきタレントと信者(=ファン)をつなぐ“経典”。その中にはどんな教えが書かれ、ファンは何に心酔していくのか。そこから、現代の縮図が見えてくる……。
女性が顔や体を利用して、恩恵を受けることを「オンナを使う」と言う。「ブサイクは生きている価値はない」「300万の指輪を貰っても何とも思わない」などと発言してきた西川史子は、まさに「オンナを使う」女の代名詞的存在だろう。その西川がそんな女の「賞味期限切れ」についてまとめたのが、『女盛りは、賞味期限を過ぎてから』(マガジンハウス)である。
西川いわく、「いつまでも若いと思っていても、アラフォー女性は生物としては賞味期限切れ」。オンナであることにしがみつくのではなく、それを素直に認め、欲を手放すことを勧めている。若さにこだわる美魔女は痛々しく、セックスに固執することや、幸せ自慢のブログを書くことも読むことも、今ある幸せに満足できなくなるという意味で不健康だと説いているのだ。
そんな、賞味期限が切れ、オンナとして戦線離脱を余儀なくされた西川は、女性だけの世界に身を移したという。若い頃「妬み、僻みしかない」「裏がある」として敬遠してきた女友達の良さに開眼し、「何かあったら駆けつけますから、甘えてください」「もう家族だよ」とまで言われる関係を築く。趣味は宝塚観劇。オンナを使うことばかり考えてきた西川が、同性と信頼できる人間関係を築く様は、一般には「成長」と捉えられる。しかし、エピソードから漂ってくるのは、「ほの寂しさ」で、西川が女友達にすがっているようにしか感じられてならない。
しかし、テレビ出演について語る西川は、俄然息を吹き返す。テリー伊藤の「何も生み出していない人の話を誰が聞きたいと思うの?」というアドバイスのもと、ニュースや本などで知識を仕入れ、西川会(西川邸でのホームパーティーの名称。主な出席者は杉村太蔵、田中みな実、お笑い芸人など)で刺激を得て、リフレッシュのために旅行もするなど、努力を惜しまない。
ここまで読み進めると、西川に対する根源的な疑問がわき上がる。西川はなぜこんなにも、テレビに出ることに固執しているのだろう。
医師としての使命感だろうか? しかし、西川が出演するのはバラエティ番組であって、健康番組ではないので違うと言えるだろう。それでは金のためだろうか? これもまた、西川はテレビ出演時に「ギャラより高い服を着ることもある」と言っていることから、違うと言える。