“普通”の人を“普通の幸せ”で縛りつける……女性誌王道の役割を担う「LEE」
でも「これが普通なの!」「これが幸せなの!」という呪いは、実は女性誌の役割なんですよね。「××のバッグがマスト」「女は求められて結婚するのが幸せ」「婚約指輪は月給の3カ月が普通」「結婚式はゴージャスにみんなに祝ってもらうのが幸せ」「子どもが3歳になるまでは母親がそばにいるのが普通」、これまで多くの産業に金を落とし、多くの女性を苦しめてきた普通という名の呪い……。「LEE」はそれがいまなお色濃く残る雑誌です。読者も「年相当」なものを求めて自ら型にハマりたがり、普通になりたがる人々、それに答えるかのように普通である幸せを喧伝する「LEE」。“普通循環”の回転が速すぎて、一度ハマったら脱出不能な感すらします。
■普通とエロスは両立せず……
普通の幸せを念仏のように唱える「LEE」に、新エロスの女王・壇蜜が降臨しています。しかも「夫たちはなぜ壇蜜が好きなのか?」というテーマを背負っての登場。「男性の心をとらえて離さない壇蜜とは何なのか。自分とは関係ないなと思いつつも、うーん何だかちょっと目が離せないような……もしかしたら心のどこかで彼女のエッセンスを少しでもお裾分けしてもらいたいと思っているような……。そんな世の妻たちの興味と混乱を代表して、LEEが壇蜜さんの魅力に迫ります。エロスは家庭を救うのか!?」とリードは意気込んでます。妻たちが壇蜜を若干目の敵にしているような「LEE」編集部の書き方ですが、それでも敵にエロスのお裾分けを期待するという厚かましい企画でもあるのがポイント。実際にどれぐらいの人が「壇蜜に夫をとられた!」と思っているでしょうか(反語)。
読者からは「壇蜜さんのその色っぽさはどこからきていると思いますか?」という“それ、本人に聞く?”という質問も。それに対して壇蜜は、マルキ・ド・サドや団鬼六の作品に出合ったこと、元彼にSM調教されたことなどを挙げて「私は“普通”とは違う“非凡で希なもの”を運命的にたぐり寄せてしまうような、いびつになるべくして育ったみたいなところがあります。そのいびつさやゆがみの濃度の濃さが、私の色気の核になっている気がします」と口調こそ優しいですが、かなり強く一線を引いた感があります。壇蜜の立ち居振る舞いは賛否両論こそあれ、あのサービス精神の旺盛さと肝の据わりっぷりは、プロとしての覚悟とこれまでの「普通じゃない」場数をこなしてきたからこそ身についたもの。ハイリスク、ハイリターン。「LEE」読者も夫を壇蜜に取られて悔しいなら(そんな人いないだろうけど)、「普通」を捨てないと!
でも壇蜜ページをめくると、そこにあったのは「全国30都市おしゃれスナップ」というページ。典型的な「LEE」読者が集まるページを眺めていると、ボーダーのワンピースやビルケンを愛用し、わかりやすくエロスから遠ざかっている読者に、いきなり壇蜜を目指せというのは酷なような気も……。でも大丈夫、例えエセ壇蜜に失敗して「欲求不満婆」になったら「美ST」を読めばいいし、性欲高まりすぎたら「婦人公論」に読者手記を送れるという手もあるから! ほら、雑誌が多様性に富んでいれば「捨てる神あれば、拾う神あり」。脱「普通」は意外と楽しいかもしれないですよ。
(小島かほり)