女は閉経で刷新される? 伊藤比呂美が語る女の性と『閉経記』
―――すべての体感を言葉にされているんですね。本の中で、更年期の症状やホルモン補充療法のくだりもそうでした。
伊藤 若い時から、自分の「快・不快」を見つめてきたから。自分から流れ出る血も経血も汗も大小便も、体感したことを客観的に書くのが私の生業。たぶんみんなが気づかないようなことを私が先に気がつき、すべてを「面白い・楽しい」ととらえているんでしょうね。それを言葉にして、女たちに伝えたい、流布したいと思ってきましたから。最近では「使命感」のようなものを感じています。女子校の委員長感覚ですよ(笑)。
―――快はいいけど、不快は避けたい気がします。痛みも傷つくのも、できれば避けたいと。
伊藤 すでに満身創痍な女も多いでしょうし、傷ついていることに気づいていない女もいますよね。でもね、その傷や苦しみは、女をどんどん味わい深~くしているのですよ。結婚しようがしまいが、子どもがいようがいまいが、その状態を「これがあたしなんだ」って自分で見つめた時に、経験は決してマイナスにならないから。そして「これでいいんだ」と思えることが絶対見つかりますから。結婚した女もしなかった女も、子どもを産んだ女も産まなかった女も、みんな同じ。手を取り合って、いや、手は取り合わないか(笑)、スッと寄り添ってパッと離れて、そんなふうにして生きていくのだから、みなさん一緒に老いていきましょう、というのが、委員長の締めの言葉ですね。
伊藤比呂美(いとう・ひろみ)
1955年東京都生まれ。97年より米・カリフォルニア在住。青山学院大学文学部に在籍中から詩を発表し、78年現代詩手帖賞を受賞。自身の子育てを綴ったエッセイ『良いおっぱい悪いおっぱい(完全版)』『おなかほっぺおしり(完全版)』(中公文庫)、近著に『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(講談社)『女の絶望』(光文社)『読み解き「般若心経」』(朝日新聞出版)がある。