ドラマレビュー第4回『雲の階段』

無残な結末ほど色気を放つ、弱々しくもえげつない男・長谷川博己の『雲の階段』

2013/05/03 17:00
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『雲の階段』公式サイトより

 水曜22時はドラマ激戦区だ。この枠にドラマを新設したフジテレビでは『家族ゲーム』が、日本テレビでは『雲の階段』が放送され、毎週どちらを見るか悩ましいところ。初動の話題性においては『家族ゲーム』が一歩リードし、『雲の階段』が、出遅れた感があるが、こちらはこちらで、じわじわと人気が盛り上がってきている。

 本作は過疎の離島で無免許医師をやっている相川三郎(長谷川博己)を主人公とする物語だ。三郎は、事務員として勤めている診療所の所長(大友康平)に、医療技術を教えこまれ、無免許ながらも手先の器用さで島の患者たちを診療する日々を送っている。看護師の鈴木明子(稲森いずみ)と恋愛関係にあるが、結婚の意思はなく、流されるままに受け身の人生を送っていた。しかしある日、島に遊びにきた田坂総合病院の令嬢・田坂亜希子(木村文乃)の子宮外妊娠を手術したことで、亜希子に好意を持たれる。それがきっかけとなり、三郎の中にも欲望が芽生え、やがて島から離れて東京に向かう。

 というのが第3話までの大まかなあらすじだ。第4話以降から始まる第2部では、東京に向かった三郎が、無免許医師であることを隠しながら亜希子と結婚することで、権力の頂点に上り詰めていくピカレスクロマンへと変わっていくものだと予測されるが、そういったストーリー展開以上に面白いのは、長谷川博己が演じる三郎と、彼に翻弄される女たちとの関係だ。

 出世作となった『セカンドバージン』(NHK)以降、長谷川は、カッコよくて仕事はできるが、弱々しくて情けない男を演じ続けることで、視聴者を惹きつけてきた。三郎は、いつも怯えたような目で、オドオドとしているが、女にモテモテだ。しかし当の三郎は、女に好意を持たれること自体に怯えているようで、徹底して受け身である。第1話で「僕には自分の意思がない」と明子に言うシーンがあるのだが、そんな弱々しい三郎に対して明子は「私がこの人を支えなくては」と、献身的に尽くしていく。


『太宰治―生誕一〇〇年記念』