村上春樹新刊イベント、「本の内容大妄想大会」「ハルキスト極寒に締め出し」の不条理
うわあ、すごい人! カメラもいっぱい来てるよ!
ホールの奥の席に座って周りを見てみる。席が半分くらい空いている。……しかもなんか、メモ取ってるヤツ多くね? なるほど、ホールにいる人たちの多くは、関係者もしくはプレスっぽい。純粋なイベント参加者って、10人? 20人?
イベント開始時間だ。出演者の福田和也先生が、開口一番「僕は文芸評論家だから、読んでみないと(なにも)わからないんだよね」などとそもそもの大否定から始まった。テンション低すぎですが先生、まあその通りですよね。タイトルしかわかっていない本の内容を、いちいち「こうかも」「ああかも」とか推理するなんて、事件が起こったけど詳細がわかってない事件を扱ったワイドショーみたい。
ホールには、出演者を囲んで半円状にイスが並べられている。そこで「色彩を持たない」とはどんな意味なのか、「巡礼の旅」をしているのはなぜなのかなどと思い思いの予測を発表し合っている……ようである。発言者の持っているマイクはハウリングしまくり、その上声が小さく、マイクを持たない発言者も多く、はっきり言って何も聞こえてこない。マスコミ様を呼んで、参加者を集めたらもうやり切った気になっちゃったんですかね、マイクの調整くらいしといてよ。ホールの奧にはマスコミがたむろしており、そこの扉が開けっ放しになってるせいで、寒風吹き込んで寒いし。
激しく退屈かつハウリングで耳の痛いイベントは、11時43分くらいに突然終了した。全員、外に出ろというのである。え、カウントダウンってどこでやるの? 会場内のイスが片付けられ、ホールの中には報道陣がなだれ込んだ。外に出されたハルキストたちは、極寒の中、整理券の番号順に並ばせられた。近所のスタバから、珈琲のサービスがやって来た。整理券はどうやら100枚ほど配られたようだ。発売直前に来た大勢の人たち、正解だよ。
なんで追い出されちゃったのかよくわからない。
筆者は体質的に珈琲が飲めないので、身体を温める術もなく、鼻水垂らしながらきらびやかなホールをガラス越しに眺めていた。気分はまるでマッチ売りの少女である。わあ、中はキラキラしていて暖かそう!!
さっきまで入れてもらってたホール。これから何が起こるの?
見てみると、ホール内の壇上にデジタルの時計が置いてある。その時計の数字がすべて0に変わった瞬間、壇上に山と積まれた新刊を覆い隠していた布が払われた。後ろにいた女子2人が嬌声を上げた。
ねえねえ、カウントダウンって?
自宅に戻ってニュースを読んでみると、どうやらホールの中ではカウントダウンが行われていたようである。「ファンや報道陣から歓声が上がった」とか書いてあるけど、ガラスで仕切られて、極寒の中ただ待たされていた多くのマッチ売りたちの耳には、まったくなにも聞こえなかった。喜んでいたのは20番以内の整理券を持っていて、暖かい室内でカウントダウンを迎えた優秀なファンと、マスコミの人たちだけ。