『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』発売!

村上春樹新刊イベント、「本の内容大妄想大会」「ハルキスト極寒に締め出し」の不条理

2013/04/12 20:00
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『色彩を持たない多崎つくると、彼の
巡礼の年』/文藝春秋

 「出版不況」といわれて久しい。以前は、「持ち運べる手軽な娯楽」の地位を独占していた書籍や雑誌が、今やスマホにすっかりその地位を明け渡していることからもよくわかる。そこへ、村上春樹大先生が、ひとつ新作を出すとポツリと告知された。タイトルは『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)だそうだ。それだけで毎日のように発売前なのに「重版かかった」だの「50万部」だのとニュースになり、大フィーバーである。なんか出版界に舞い降りた救世主って感じ。

 しかしニュースを見るにつけ、「ホントにそんなに盛り上がってるのか?」という疑問が湧いてくる。50万部はいいけど、それ、いちいちニュースにすること? 累計770万部って言ってるけど『1Q84』(新潮社)を最後まで読みきった人って何人いるの?

 そんな中、代官山蔦屋書店で、発売日の4月12日、午前0時ジャストに販売を始めるというイベントがあった。なんかボジョレー・ヌーボーみたい。その1時間前には、文芸評論家の福田和也先生をお呼びしてトークショーを開催するという。まだ誰も読むどころか、表紙すら見ていない状態で、本の内容についてあれこれ話し合う会だそうだ。そして解禁1分前からカウントダウン。参加できるのは、予約して整理券を入手した人のみとか。……これはぜひ参加して、この多崎つくるを追い求める熱狂が、どこまでホンモノか見に行ってみようじゃないか。

 イベントの整理券はすでに定員に達している。……やっぱり当日は、「調教済みのレタスでサンドイッチを作った」りするオシャレ人種や、女の子に「ごく控えめに言って、君という女性は悪くはない。まあできることなら、君と水族館に行ってみたいと思う。それがいいことか悪いことかは分からないけどね」みたいな、よくわからない長文告白を述べてしまうような厨二病男子が集まるのか。多分彼らの敵は端的な言葉を投げかける松岡修造だろう。それとも意外に、オタク臭ぷんぷんのチェックシャツがいたりするのか。 期待はふくらむばかりである。

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こちらがイベントの整理券!!

 午後11時、10分前。超洒落乙で有名な代官山蔦屋書店に到着。会場付近は深夜とは思えない人でごった返している。おお、これが発売を待ちきれないハルキストたちか! あちこちにカメラを持った取材陣がいて、次々とハルキストたちにインタビューを仕掛けている。みんな「買ってすぐ今晩中に読みます」だの「村上春樹の本は全部読んでます」だの熱いことを述べて、取材陣を喜ばせている。受付を済ませて整理券をもらい、ホールに入った。受付番号は29番。


『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』