[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

「1年間がんばった自分へのごほうび」フレーズで女を殺すSK-IIの甘い罠

2012/12/30 21:00
(C)安彦麻理絵

 「年末・年の瀬、綾瀬はるかの勢いが凄い事になっている」と、思うのは私だけだろうか? 雑誌のグラビアや女性誌の表紙に、綾瀬はるかが出まくりである。というか、大河絡みの書籍も出回ってるから、書店の中は、「綾瀬はるかまみれ」な感じである。昨日買った「週刊文春・新年特大号」(文藝春秋)では、冒頭の「原色美女図鑑」のページに、余裕の貫禄を漂わせて登場。そして、意図的にかどうかは知らないが、何故かシメまで綾瀬はるか。背表紙の「タケダ」の風邪薬の広告で、「あなたのカゼは、どこから?」と、綾瀬はるかがニッコリ微笑んでいる。雑誌の誌面には、現在発売中らしい「原色・綾瀬はるか写真集」の広告も出ていたので、なんていうかとにかく「ああ、今、旬の人なんだな」と、実感させられた。

 さて、世の中の男性方はきっと、この「綾瀬はるかフィーバー」を、「来年の大河の主演だから」という理由で納得してらっしゃるのではないだろうか? 確かにそれも一理ある。が、しかし。私はそれよりも、「クリスマス・年末は、女の欲望が爆発する時期だから」……だからこんなにも世の中が、綾瀬はるか祭りなのでは……と、睨んでいる。というのも、誰もがご存知の通り、綾瀬はるかは「SK-II」の顔である。そのSK-IIがクリスマス・年末に女達に仕掛けてくるマジック、それが「SK-IIピテラ実感キット」なる8,925円のトライアルセットだ。

 以前、電車の車内吊りが、このお得な(?)トライアルコフレの広告一色だった事があったが、「この1年間がんばった自分へのごほうびに」というキャッチフレーズが車内の女性たちを激しく洗脳していた。……がんばった自分へのごほうび。私が思うに、このフレーズ、実は「女が好きなフレーズ・ベスト3」に入るんじゃないだろうか? クリスマスや年末にこのフレーズで、女心をくすぐられたら、大抵の女が財布のヒモを緩めてしまうという、まるで麻薬のようなフレーズ……というか、無駄遣いの言い訳。そんなふうだから、普段は「SK-II、高すぎなんだよ!!」と、アンチSK-IIな私まで「そうだよな~~、がんばった自分へのごほうびに……ちょっといいかも!?」なんて、うっかり洗脳されかかったほどである(すんでの所で正気に戻って買わなかったが)。

 ところでSK-IIの看板といえば、以前は「桃井かおり」であった。「桃井かおりなくして、SK-IIはありえない」そこまで思わせてしまうくらいに、桃井かおりの登場するCM毎回強烈だった。なにしろ、一応化粧品のCMなのに、何故か女のブス魂に火をつけてくる……なんか知らんが、みんながあのCMを見ると「桃井かおりのモノマネをしたくなる」って、どうなんだろう。口元をモグモグさせながら「わかいときはいいのよぅ~~~」とか、男の前ではできないような、宴会芸みたいな事を、ついうっかりやってしまう自分がいる。SK-IIのCMには以前、女優の菊池凛子や緒川たまきも出てた記憶がある。

 でもそれは期間限定だったのか、一瞬だった。その後「美白担当」という事で、小雪も登場するようになって、この人はかなりの安定感で、桃井かおりと最強のタッグを組んでたように思う……。かおりと小雪のビューティペア……しかしそれが。ここ最近はもう、SK-IIは「綾瀬はるか一色」になってしまった。これは「はるか世代の若いコたちにもSK-IIを買って欲しい」という、購買層の拡大を狙ってなのだろうか? なにしろ、このSK-IIコフレ、綾瀬はるかのグラビアと共に、「non-no」(集英社)や「MORE」(同)等のさまざまな女性誌で派手に宣伝されていて、普段は手が出ないSK-IIでも「1万円以下のトライアル価格だったら、試してみたい!!」という気分にもなるだろう。しかもあの必殺フレーズ「がんばった自分へのご褒美に」が、綾瀬はるかの笑顔と共に、激しく洗脳してくるのだから、逃れようにも逃れられない。

 こうして、クリスマス・年末の「ついうっかりSK-II」が、あちこちで発生するわけだが、でもまあ、そんなのもアリかな、と思ったりもする。そんなふうに魔法をかけられて、ちょっと高いもんに手を出すのって楽しかったりするもんだし。ウキウキしながら、ちょっとの間だけSK-IIを使うって、別に悪い事じゃない。……が。このコフレがキッカケで、うっかり「リピーター」になってしまったら大変である。なにしろ、ここの看板商品の化粧水、150mlで16,275円もするのだ。毎月の収入が、人様に自慢出来るくらい稼いでるような女性だったら、こんな高額コスメのリピーターになってもかまわないだろうけど、しかし。20代とかの就職したばっかみたいな若い女の子たちに、この金額はちょっとアコギな話ではないだろうか。


 お手頃価格のSK-IIコフレを、サンタコスプレ姿で、無邪気な笑顔で売ってる綾瀬はるか。「是非試してみてくださ~~い!!」という、気さくで可愛いらしい雰囲気に心を許して、自分へのご褒美に買ってみた。そして、使ってみたらすごく良かったので、後日また買いに行ったら……あれ? こないだ店にいた可愛い子が今日はいない。その代わり、出てきたのは髪の長い、薄ら笑いを浮かべた色白の女……小雪。「……こちら、税込み16,275円になります」、現品の値段を聞いて仰天、そんな金額、とても私には払えない。そう思って店から出ようとしたその時。薄暗い店の奥でタバコを吸ってたオカッパの中年女・SK-IIの元締め・桃井かおりがのっそりと現れて……そして一言「……あんた、このままで帰れると思ってんの?」

 こうして女達はSK-II地獄にハマっていく……かどうかは知らないが、毎月のお給料から頑張ってSK-II代を捻出、ってどうなんだろう? まあ、溺愛して使ってるのであれば別にいいのだけど、なんか「頑張って使う」のって、どうなんだろうなー、SK-IIの美容部員に以前「若ければ若いほど、早いうちから使ってるほうが手遅れにならないんです!!」なんて言われた事があったけど、まあそれが事実とはいえ。生活費削ってまでSK-IIは、あまり美容によろしくないと思うのだが。「銀座のナンバーワンホステスに入れあげて、尻の毛までむしり取られてスッテンテン」みたいな、なんだかそんな絵ヅラを思い浮かべてしまう。

 そんなわけで、綾瀬はるか。先日、主演する大河のCMを見たら、なんだかんだ言って「あ、可愛い」と思ってしまった。男だけでなく、女もウマい具合にころがしてしまうその笑顔は、やっぱりスゴい。

最終更新:2019/05/21 16:26
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