カルチャー
テレビ業界で働く女性放送作家座談会(前編)

「打ち上げに行ったら、なぜかPしかいなかった」「10万円余計に振り込まれ……」テレビ業界の女性たちが見た現実

2025/01/24 13:00
サイゾーウーマン編集部
写真AC

フジテレビ勤務の女性と中居正広氏とのトラブルをめぐり、テレビ業界全体に“性接待”“性上納”がはびこっていたのでは、との疑惑が広がっています。いまだ男性中心社会であるテレビ業界の中で働く女性は、どんな苦労を抱えているのか? 女性放送作家にスポットをあて、業界でのやりがいや苦労、女性だからこそ抱える問題に迫った記事を再掲します。

目次

・ 「いつセックスさせてくれるの?」テレビ業界で飛び交うセクハラ発言
午後10時を回ると下ネタ解禁。社内の男たちの性癖や性事情を把握できるほど
打ち上げに行ったら、なぜかPしかいなかった
女性作家というより、「まだ若い女」としてしか見られてない
ディレクターとプライベートでも仲が良いのは、大事なポイント
どんなハラスメントでも、耐えるだけが道じゃないはず

※ 2017年12月23日公開の記事を再編集しています。

座談会出席者

A:制作会社勤務ののち、独立してフリーランスに。30代、1児の母。
B:出席者の中で唯一の事務所所属作家。現在妊娠中の30代。
C:広告会社のライターを経て業界に入りまだ1年目。20代の新参者。

 「いつセックスさせてくれるの?」テレビ業界で飛び交うセクハラ発言

――今日の座談会は、「テレビ業界でのセクハラ」をメインに語っていただければと思います。さまざまな立場の女性放送作家さん3名にお集まりいただきました。女性の作家さんは、業界でどのくらいいますか?

B 少ないと思います。作家に限らず、業界自体まだまだ女性人口は少ないですね。

C 私はまだ1年目で作家の知り合い自体そう多くはないんですが、女性作家さんの知り合いは0人です。なので作家の男性に、おかしなことを言われても、セクハラなのかどうかも相談できる人がいなくて……。

――どんな発言なんですか?

C 日常会話の中で、「俺って男としてセーフ?」のような感じで話が始まります。私にとってその方は大先輩なので「いえ、アウトです」なんて口が裂けても言えず、同調していると「で、いつセックスさせてくれるの?」とか、「プレイ中はMでしょ?」とかどんどん進んで。彼としては冗談のつもりで悪意もなく、セクハラだなんて露ほども思ってないんでしょうけど、一般企業で働いていた経験のある私としては衝撃でしたね。会社だったら即異動か解雇レベルですもん。

B あ~そういう人、いますね。フリーの場合なら会社って枠組みがない分言い放題だし、ある程度年齢を重ねてたら注意する人もいなくなるから、恥をまき散らしてることに気が付かないんですよね。ある意味かわいそう。

C 些細なことだって受け流せばそれまでなんですが、お会いするとずーっとそんな調子なので、毎回気力をすり減らされていました。セクハラというより、モラハラですかね。

A すごい方ですね……。女性側が30歳を超えるとハラスメント系はかなり減るから、今は辛抱しかないかもしれないですね。

午後10時を回ると下ネタ解禁、社内の男たちの性癖や性事情を全て把握できるほど

――辛抱しかないんですか? Aさん、Bさんもそのような経験が?

B ありますね~。まだ業界に入ったばかりの頃……それこそCさんと同い年くらいの若さで。右も左もわからず企画会議に参加して、そこで初めて出された宿題が「下ネタで替え歌を作ってこい」で。

A・C エッ! いやだ~!

B ですよね。当時は訳もわからず必死に考えました。でも全然できなくて……。下ネタって言ってもどの程度なのかもわからないし、考えあぐねた末に先輩に相談したら「あ~それね。ただのセクハラ」って言われたんです。企画は関係なく、私が考えた替え歌を発表させることを楽しもうとしてたんでしょうね。その日はさすがに泣いて帰りました。

A それが最初の宿題ってキツイですね……。

――企画の会議中はどんな雰囲気なんでしょうか?

A もはや社内の男たちの性癖や性事情を全て把握できちゃうくらい、会議ではそういう話題が出ますよ。20~30人いる会議室で大学時代のセックス事情を話し出すD(ディレクター)とか、風俗の話で延々盛り上がったりだとか。感覚的に、午後10時を回ると下ネタ解禁って感じです。

B 会議前の雑談でもよく風俗の話はしていますね~。前に一度「お気に入りの女の子とのプレイを盗聴してきたんですよ~! Bさんもぜひ聞いてください!」と若いADに振られて、もうビックリしましたね。さすがにドン引きしたので断りましたけど。

C 断れたんですね……よかったです。私は振られた下ネタを一度嫌がったことがあるんですが、「若い女ぶりやがって。この程度でダメだったら業界じゃやってけねーよ」なんて言われてしまって、「そんな業界なんだ……」って嫌になりました。それはバラエティの会議だったので、余計ひどかったのかもしれません。

B バラエティはどうしても下ネタが多くなるかも。冷静に考えたらそんな業界おかしいのに、もう慣れちゃってオカシイって思わなくなってきちゃってるのかもしれないです。危ない慣れですね。 個人的には、朝の情報番組だとかNHKだとかの会議はまともで、セクハラや下ネタは少ないイメージです。

打ち上げに行ったら、なぜかPしかいなかった。案の定ラブホテルに

――業界といえばP(プロデューサー)とアイドルなんかの枕話はよくウワサされますが、女性作家さんたちにも、そういうウワサはあるんでしょうか?

B 私の知り合いが実際に誘われたって話は聞きました。とある番組に携わっていた子なんですが、「視聴率が良かったから」とPから10万円余計に振り込まれていて、おかしいな……と思いながらも打ち上げに行ったら、なぜかPしかいなかったらしくて。2人でご飯の後、案の定ラブホテルに無理やり連れてかれそうになったって言っていました。通りがかった人に助けられて無事だったらしいですが、怖いですよね。

C アイドルやタレントならそういう話ありそうですけど、制作側でもあるんですね……。恐ろしい……。

――逆に、それを逆手にとっている女性作家さんはいないんでしょうか?

A いるのかもしれないけど、わからないなあ。

B いたとしても、正直それだけじゃ長くは続かないよね。女を武器にして番組に入れてもらっても、何もできないんじゃ次は呼ばれないだろうし、結局、実力がないと残っていけない世界な気がします。

A そうやって思われていたことはあったかも。企画会議中、私にだけすごく態度が悪い男性作家がいて、「なんで私にだけそんな態度なの?」って、こっちも嫌いだったんですけど、酒の席で話す機会ができたときに思い切って聞いてみたんです。そうしたら「女っていうだけで急に番組に呼ばれたりするし、どうせ業界の女は誰か偉いやつらと寝てるんだろって思ってた」って言われたんですよ。

C 「ハァ? 何言ってるの?」って感じですね!

A そうそう、まさにそう言いました。その男性とは今でこそ仲良しになったけど、「女性ってだけで、そんなふうに思われることもあるんだな」って勉強になりました。

女性作家というより、「まだ若い女」としてしか見られてない

――最初から偏見の目で見られると、ちゃんとしている部分は見てもらえないことが多いですよね。

B ですね。私は20代の頃、演出の男性にとても好かれてしまったことがあって。その方の企画に再度呼んでもらえたとき、女スタッフから「やっぱりいるんだ。お気に入りは楽でいいよね~」と嫌味を言われましたよ。正直、その頃は必死で頑張ってネタをたくさん通していたので、次も呼ばれたのはその成果だと思うのですが、傍から見たら“お気に入りの女だから”って感じだったんでしょうね。

C 少し見ていたら、まじめにやってることくらいわかるはずなのに、そもそも“女だから”ってだけで舐められている感じがたまらなく嫌ですね。

――一方で、女性放送作家だからこその仕事もあるんですよね?

A それももちろんあります。「女性目線」が欲しい、というところで呼んでもらったりしますね。「女性目線」と言われると、ものすごくハードルが上がりますが! どっぷりテレビの業界に染まり、下ネタも全然OKに染まってるといわれる私が、普通の女性目線を語って良いものかと。でも、求められることはすごくありがたいし、一般的な女性目線を忘れないようには心がけています。

B あとは、企業の取材に行ったときに、こちら側に女性がいた方が打ち解けて話してもらえたりして、意外に重宝されますね。女の子の家で取材だったりするときも、女性スタッフがいた方が女の子も安心してしゃべれるみたいで。こういうのは女性ならではですよね。

――なるほど。「女性目線」のほかに、よく言われる言葉ってありますか?

A うーん。会議が行き詰まった頃に必ず「女性としてはどう?」って振られるの。あれは本当に困る!

B ありますね! 行き詰まっている状況を打破してほしいのはわかりますけど、煮詰まってるもんは煮詰まってますから。女性関係なくどうしようもないのに、そんな状況のときだけ振らないでって感じ。

C 私は企画会議もまだまだあまり参加できないので、そういう経験は少ないですが、「合コンセッティングして!」はよく言われます。女性作家というより、まだ若い女としてしか見られてないからかもしれないですね。言ってこられた男性作家さんは、年収が1000万円を超えている方だったので、合コンなんかしなくても女性が寄ってきそうなんですけどね。

ディレクターとプライベートでも仲が良いのは、大事なポイント

――年収1000万超え! すごいですね。放送作家さんって実は稼げる職業なんですか?

B どうでしょう、ピンキリだと思います。上はそれこそ億プレイヤーですけど、数えられるくらいじゃないでしょうか。下はどうなんだろう、よくて月4万円とか。

A 放送作家は、直接ディレクターさんと作業することが多いので、そこで認められたり、「この人やりやすい」と思ってもらえたら、どんどん仕事に呼んでもらえたりします。あとは、何だかんだ人と人の相性も大事な仕事なので「ディレクターと仲良し」というのも大事なポイント!

B いますね! そういう人。「会議での発言も企画も面白くないのに、なんでずっと残れてるんだろう」って人は、大体Dとプライベートでも仲が良くて、そのディレクターがいる番組は大体呼んでもらえるんですよね。

C へぇ~! 男性同士でのえこひいきみたいなのも、やっぱりあるんですね!

――そういう放送作家さんも含め、稼いでる人はやはり激務なんでしょうか?

A たいていの方は「ほとんど寝てない」ってレベルで毎日を過ごされているみたいです。

C あ、そういえば年収1000万超えの男性作家さんも「1月1日と2日以外、丸一日の休みは取ってない」って言っていました。睡眠時間も「5時間眠れたらいいほう」だとか。

B 全て自分でやってらっしゃる方はそういう方も多いみたいですけど、大御所さんの中には、弟子や後輩に台本を書かせて、自分はそれを確認するだけって人もいますよ。いくら台本を肩代わりしたって、番組のエンドロールで名前が流れるのはその大御所さんだけなんですけどね。

A 「使い勝手がいい」ってウラでディレクターや大御所に言われているのにも気づかず、はした金で使われる若手作家の多いこと多いこと……。

C 私のような若手にとっては、先輩作家さんから頼まれたら“断る”っていう選択肢が基本的にないので、足元を見られているのがわかっていてもやっちゃうでしょうね。そもそもその“はした金”すら出ないお手伝いもいっぱいしますし……。

――だんだん夢のない話になってきましたね(苦笑)。

B 稼げる金額的には夢のある職業だとは思います。けど、やっぱりそこまで達するのは相当大変ですね。当たり前ですが。

A 私は子どもがまだ小さいからそっちに割かなきゃいけない時間も多いし、現状は難しいかな。

B そうですね。私も独身時代のようにがむしゃらに、っていうのは正直体的にも厳しいです。たくさんお仕事をしたい! っていう気持ちはありますけど、宿題を抱えれば抱えるほどなぜか“つわり”がひどくなるので、今は無理しないようセーブしています(笑)。

C えっ! 宿題というストレスが“つわり”となって出てきちゃうんですか!?

どんなハラスメントでも、耐えるだけが道じゃないはず

――Aさん、Bさんはママということもあり、今後は“仕事と子育ての両立”が求められるんですね。テレビ業界は昔から人気の職業ですが、業界や放送作家を志す女性に伝えたいことはありますか?

A まだまだ男性社会ですから、Cさんが受けたようなセクハラだとかモラハラだとかは、正直どうしてもあると思います。でも、最初にも少し言いましたが、30を超えると言われなくなりますよ! あと、業界にもちゃんとしていらっしゃる男性はたくさんいるので、あまり幻滅しないでくださいね(笑)。

C ちゃんとした男性、いるんですね。その言葉で少し安心しました。

B いますいます! 人間的に尊敬できる方、たっくさんいます。Cさんもこれから作家を続けていけば出会うと思いますよ。

C そう信じたいです(笑)。えっと、私はアドバイスなんて言える立場ではないのですが……。どんなハラスメントでも、耐えるだけが道じゃないはずだ、と思っています。作家に限らずどの職業でも、「この一本道しかない」ってことは少なくて、遠回りでも裏道でも、探せば道はそこだけじゃないはずです。放送作家になる道は本当に人それぞれなので、自分に合った道を見つけて頑張ってほしいです。

――後編では結婚から妊活、出産まで、“ママ放送作家”としてのお話を詳しくお伺いします!

(文:ヨコシマリンコ)

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最終更新:2025/01/24 13:00
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