【ロピア】「異常」73店で64万パック表示違反品を販売――なぜ問題は放置され続けた?

2024/09/12 15:00
小林久(元スーパーやまと社長)
ロピア(写真:サイゾーウーマン)

 最長約3年3カ月にわたり、73店舗において表示違反の商品を64万5994パック販売していたと報じられたロピア。異常ともいえる期間の長さと販売数について、老舗スーパー「やまと」の元3代目社長・小林久氏に見解を聞いた。

目次

ロピア、73店舗で表示違反品を64万パック販売
ロピアの食品表示違反は「100%企業の怠慢」
現場の危機感を弱める要因は?

ロピア、73店舗で表示違反品を64万パック販売

 現在、もっとも勢いのあるスーパー「ロピア」。店名の由来でもある「ロープライスユートピア」を掲げた低価格や大容量パック、インパクト大な見た目の総菜や肉が人気を集めている。

 しかし昨年6月、原料や原産地名を表示しないまま商品を販売した食品表示違反で農林水産省から指摘が入っていることを知る消費者は、どれだけいるだろうか? 

 少なくとも2020年4月1日から23年7月26日までの間に、ロピア中央林間店ほか73店舗において64万5994パックを表示違反のまま販売していたと報じられ、ロピアは「法令に対する認識不足と社内管理体制の不足」と説明している。

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 最長約3年3カ月間にわたって違反が放置されていたとは、人気スーパーのあまりにずさんな姿勢に開いた口が塞がらないが、なぜこのような事態が起こったのだろうか? 問題の根本について、創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長で、著書に『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)を持つ小林久氏に解説してもらった。

「これだけの期間、問題が放置されていたのは『法令に対する認証不足』ではなく、商品のダブルチェックや問屋やメーカーへの指導の優先順位が低くなっていたのだと推測されます。新規出店の速度が早すぎて、一番大切な商品管理が本部や店舗で追いついていないのでは?」

 表示違反内容の一例を挙げると、「冷やしても美味しい!おさつスティック」が使用していない原材料名「植物油脂」「はちみつ」を表示、原材料を原材料に占める重量の割合の高いものから順に表示せず、原料原産地名(国産)を不表示。「カニサラダ(かに風味)」は原材料名を不表示、原料原産地名「アルゼンチン産」を不表示となっている。

 こうした表示違反は、スーパーではまま起こり得る問題なのか?

「普通はめったにありません 。表示違反商品をこんなふうに長期間販売していたらお客さんは確実に離れていく。単独のディスカウントストアならともかく、日本を代表するスーパーでこれほどの数が出るのは驚きです。私のスーパーでは、自社製造商品での表示漏れはなかったが、ベンダー(問屋やメーカー)から仕入れた時点で表示内容に漏れがあったことはありました。その場合は徹底的に再発防止の指導を行います」

ロピアの食品表示違反は「100%企業の怠慢」

 なお、スーパーで販売される商品は3つに大別されるという。

①通常取引のある問屋やメーカー(総称:ベンダー)から仕入れる「レギュラー商品」
②季節商品や普段は取引のない問屋の大量の売り込み等による「スポット商品」
③自社で製造・加工して販売する商品

 このうち、①に表示漏れや産地表示違いの起こるケースが多いという。ベンダー側で表示漏れが発生し、店がダブルチェックを怠ることで店頭に並ぶ。店側からの指導によって再発防止は可能のようだ。

 ②には「素性の知れない」商品が入り込む余地が高い。そのためトラブルを避けて、普段取引のないベンダーからは一切仕入れないスーパーも多いという。

 そして、③の商品における表示義務違反は「100%企業の怠慢」だと小林氏は断言する。

「自社商品の場合、本社から指示された内容がシールに印字されるため、 普通に考えれば表示漏れが発生することはないが、ロピアはこれが多い。そのために行政(農林水産省)から厳しい指摘があった。このまま放置していると事故につながる可能性が高いと行政に認識された証拠です」

ロピア、現場の危機感を弱める要因は?

 ロピアの売り場に並ぶ華やかな総菜や弁当、スイーツの数々。精肉、総菜など売り場ごとにを売上高を競わせることで、見た目や価格にインパクトあるものを提供できているという。競い合うのはよいが、食の安全意識がおざなりになっているのではないだろうか。

「テレビニュースでもスーパーで健康被害の程度が大きい違反商品が見つかると、 社名と店名が大きく報道される。しかしロピアは軽微な違反が多いため、そこまでの大騒ぎにならない。これも現場の危機感を弱める要因ではないかと思う」(同)

 一つひとつの違反は軽いものかもしれない。しかし、それらが長年にわたり73店舗にもおいて見過ごされ続けていた企業体質に問題の根深さを感じる。

「拡大期にありがちな『法令遵守意識(コンプライアンス)の低さ』 。買う側からすれば『安物買いの銭失い』となるが、これは消費者ばかりではなく、企業にも言えること。一度信用を失くしたら、回復するための労力は計り知れません。それを出店数でカバーしようとするなら、その安売りはとても『高くつく』でしょう」

 スーパー業界の新星、ロピア。10年後にはどんな未来が待っているのだろうか。

小林久(元スーパーやまと社長)

小林久(元スーパーやまと社長)

1962年山梨県韮崎市生まれ、山梨県立韮崎高校、明治大学商学部卒。山梨県に最盛期16店舗、年商64億円を稼いでいた創業105年の老舗スーパー「やまと」の元3代目社長。先代からの赤字経営を引き継ぎ「破綻スーパー再生」を軸に短期間で業績を回復した。2014年頃から大手資本の進出により次第に経営が悪化、17年12月に倒産。自身も自己破産へ。自身の失敗から得た教訓を企業にアドバイスしている。著書『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』(商業界)『続・こうして店は潰れた』(同文舘出版)。

【スーパーやまと元社長 小林久ホームページ | こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~】

最終更新:2024/09/12 15:00
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