義実家は【天理教】の教会だった! 夫は後継者……? 信者集結の「ガチ合宿」に潜入
夫の実家が天理教の教会だと知ったのは、結婚直前でした。当時、天理教についての認識といえば、「黒い法被を着て、路上で太鼓やシンバルのような楽器を叩きながら、歌い練り歩く宗教」であり、なんとなく、カルトの部類とは違うんだろうなあ、という程度。そんな私が天理教のイベントに潜入してきました。
※2018年6月27日公開の記事を再編集しています。
目次
・天理教「後継者講習会」とは?
・黒い法被に「天理教」、まるで異世界!?
・本格的に、ガチな“宗教”にかかわることに……
・最初からいろいろ知ってたんじゃねえのかこいつ
・天理教内の保育園とは?
・みんなゴリゴリの信者じゃん!!! かつてないほどのアウェイ感
天理教「後継者講習会」とは?
(前回はこちら)
参加を表明してから半年後、いよいよ後継者講習会を翌々日に控えた晩、夫とふたりで、持ち物の確認をすることになりました。
簡単な持ち物は、義母から転送された「後継者講習会の持ち物リスト」で把握したし、2人の子どもたちは、わたしたちの講習中に天理教施設内の保育園に預けられることもわかりました。それに、「洗濯機はあるけど、干す場所があるかはわからないから、タオル類はたくさん持っていけ!」ということも(大事)。
夫に、「どうせ3日間ずっと法被(はっぴ)を着ていることになるから、服はほんとうにどうでもいいと思うよ」と、おしゃれ欲に釘を刺されつつ、いざ出発日です。講習会前日の朝、車で8時間かけ、天理市に前乗りしました。
山を降りると天理市に入るのですが、ここは、本当に、日本なのでしょうか。
黒い法被に「天理教」、まるで異世界!?
ところどころ印象的な赤色が施された瓦屋根の黒とグレーを基調としたどでかい集合住宅が、同じようにいくつも立ち並び、路上を歩く人々はみな、背中に「天理教」と書かれた黒い法被を着ています。
あほでも、「異世界に紛れ込んだ」と思わせる雰囲気を放つ街並みです。創価学会陣取る東京都・信濃町一帯や、顕正会が幅を利かせる埼玉県・大宮公園駅界隈など目じゃありません(幸福の科学が町ぐるみになったら勝てるかもしれませんが)。
ディズニーランドがある舞浜に近い……? いや、あのようなハリボテ感はありません。もっとも近いのは、「沖縄」かもしれません。日本なのに日本じゃない、古くから脈々と続く独自の伝統文化が、がっちりと、ぎっしりと根付いている印象を受けました。
夫が運転する車が同じような建物の中の1棟に入ると、義母が笑顔で現れました。東海地方からここへ、わたしたちの激励にやってきてくれたのです。
どうやら建物群は、各地域ごとの天理教信者の「宿舎」のような場所だそうで、修行やこうした機会に訪れる信者たちの宿泊所として機能しているよう。
部屋は一部屋3万円ほどの旅館の部屋と同等の広さで、テレビや冷蔵庫等はありません。それらやトイレ、風呂は共同で使い、食事の際には食堂へゆきます。
食事はたいへんに質素で、白いごはんに、出汁が利いたお味噌汁、お新香、のりたまのふりかけ、それだけ。ごはん、お味噌汁はおかわり自由なのがうれしいところです。
本格的に、ガチな“宗教”にかかわることに……
長旅で腹を空かせていたわたしは、義母の目などないものとしてさっさと白米をかっこみました。これから義母から大事なことを聞かされるというのに。
「明日もここに泊まるんですよね」
わたしが何気なしに質問すると、義母がこう答えました。
「いや、また別の詰所(つめしょ)があるんやよ。そこに泊まるから、荷物は広げん方がええよ。はるちゃんは女性の詰所。あんた(夫)は男専用のところに行くからね」
えっ、べ、別々……!? 明日から3日間、別々……!?
「ほうよ。男と女は、別々よ」
聞いてない。聞いてないよ。部屋も別なら、講習を受ける場所も別だそう。
ちなみに子どもは当然のように「母親と同室」が前提だそうで、義母に「1人は夫の方に泊まらせることはできないか」を問うと、「へ?」と、まるで想定外のことを聞かれたかのような声が返ってきました。
「家族旅行のついでに宗教潜入」は、とんだ早とちりだったのです。どうやらわたしは、本格的に、ガチな“宗教”にかかわることになってしまったようなのです。まあ全容を聞かずノリで参加を表明したわたしが悪いのですが。
だってさあ、「講習会」だっていうから、公民館のような会場でパイプ椅子に座って、テキストを見て天理教のなりたちを学んだり、アニメか再現ビデオを見たり、踊りや歌を覚えたりするだけかと思うじゃないですか。
それが、家族が引き剥がされてまでする“講習会”って、一体……? まったく予想もつきません。
最初からいろいろ知ってたんじゃねえのかこいつ
講習会当日の早朝、外はまだ暗い頃、町中にあの歌が響き渡るのを、人が来る機会もあまりないだろうに丁寧に干されたであろうふかふか布団に包まりながら聞いていると。
「もう行くよ、準備して」
義母が部屋の戸を元気よく開け、テキパキと荷物を運び出します。そうして、「ハイこれ、はるちゃんの」と、おもむろにあの黒い法被も渡します。袖を通すと、おお……身が引き締まる思いがしないでもない。
宿舎のロビーに降りると、同地区の信者さんたちが集合していました。みな法被を着て、和やかにおしゃべりをしています。
そしてマイクロバスに乗り、講習会が行われる、教団中心部へ。ここで夫が先に降ります。あ、本当に、離れ離れなんだ。夫に、「次に会えるのは、まさか3日後?」と聞くと、
「いや、合間に偶然会えたり、1日の講習が終わったあとに落ち合う夫婦もいる」
と、ずいぶんと事情通なことを言うので、最初からいろいろ知ってたんじゃねえのかこいつ最初に教えろよと思いつつ、「合間に会えたらいいね!」と笑顔で言い、別れました。
その後、女性だけとなったバスは女性専用の宿舎的建物へゆき、部屋に荷物を置きます。
先ほどまでいた建物よりはホテル感が増し、部屋の窓からはビューもよし。
同室は、同世代のAさんとBさん。それぞれ子どもは1人ずつ。子どもたちはすぐに友達になり、「これから保育園に行くの楽しみだね! 同じクラスがいいね」など言い合っています。
そうこうしていると講習会開始の時間が迫ります。
天理教内の保育園とは?
同じように子持ち女性がわらわらと棟を出て、保育園へ向かいます。横断歩道に立ち交通案内をする信者さんたちが、「がんばってね!」と爽やかに声をかけてくれます。
保育園は0歳から5歳までの未就学児対象の施設で、かなり大きめ。保育士さんが大勢いる中に子ども2人をぶっこみ、AさんBさんと落ち合い、ここからが本番、本部こと神殿へ向かいます。
じゃり、じゃり、という質の良い砂利を踏みしめ歩くこと数分、とたんに、パッと視界が開けると同時に、目の前に、神殿がお目見えしました。
みんなゴリゴリの信者じゃん!!! かつてないほどのアウェイ感
これが、天理教本部。からっぽの信仰心をも煽る、広大で重厚な趣き。「でかっ……」と、思わず見惚れていると、AさんBさんは神殿に向かいナチュラルに一礼をしていました。天理教独自の、4回手拍子をしたあとに。
本部に近づくにつれ、黒い集団がどこからともなく湧いて出てきます。巨人戦開始前の東京ドームのような人口密度といいますか、何千人規模ではないでしょうか?
みな神殿に吸い込まれ、中に入るとさらにびっくり。黒い人間が、広大な神殿内に、ずら―――――っと、規則正しく正座をして並んでいるではありませんか。
壮観。圧巻。
わたしもAさんBさんにならい、正座をします。
ふと空気が変わり、全員参加者全員が神殿内に入ったのでしょうか。
♪えぇ~あしきをはろおてた~すけた~ま~え~てんりのみ~こ~と~
(ちん、どん、ちん、どん/太鼓や鈴の音)
なんの合図もなく歌が始まると、そこにいる全員が一斉に歌い、踊り出すではないですか。
え? え? 一体なにが起きたというのか?
何千人ものシンクロした歌声と、踊りによる法被の擦れる音が神殿内に反響し、なんか、あ、ヤバイコレ……持ってかれる……ふわぁ~って、持ってかれる……キマりそう……むしろこれ、EDM ……? そんな感じです。
っていうか、そもそもこうした歌と踊りの講習をしに、わたしたちは来たのではないのか? もうみんな、講習するまでもないゴリゴリの信者じゃん! ゴリゴリが集まる場所なんじゃん! かつてないほどのアウェイ感を覚え、知識ゼロのわたしはただただ正座でふわぁ~~っとしているしかありませんでした。
しかし、まだまだ序の口。このあとじわじわと天理教に染まりゆくことになるとは、姉さん、このときは知る由もなく――。
(文・有屋町はる)
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