「第一志望校に合格したよ」中学受験組のママ友から見たくないLINE、どう返せばいい?
「子ども同士の付き合い」が前提のママ友という関係は、価値観や環境の違いからさまざまなすれ違いが起きやすい――。ママたちの実体験を元に、ママ友ウォッチャーのライター・池守りぜねが、ママ友トラブルの解決策を考える。
高校受験や大学受験より親の負担が大きい中学受験。2024年度首都圏の中学入試の受験者数は6万5,600人で前年より微減したが、受験率は22.7%と過去最高を更新した。
都市部では2人に1人が受けるといわれている中学受験だが、大変なのは受験後のママ友付き合いではないだろうか。今回は、受験組のママ友との距離の取り方に頭を悩ませるお母さんの声を取り上げる。
目次
・低学年から中学受験の勉強をスタート
・ママ友の娘は小5入塾で上位クラスへ
・ママ友から「第一志望合格」のLINE
・ママ友ウォッチャーの解説
低学年から中学受験の勉強をスタート、なのに小5でクラスが落ちて……
優子さん(仮名・40歳)は、都内で小学6年生になる望美さん(仮名・12歳)を、小2から選抜制の大手塾に通わせていた。
「娘は年中から公文に入れて、算数は先取り学習をしていました。中学受験のための塾は、小3の2月に入塾すると聞いていたので、公文はその準備のために通わせていた感じです。それで、小2の時に、大手塾が主催する塾生以外も受けられるテストに挑戦したんですが、『いま入れば入塾テストを受けなくていい』と言われ、小3時に必ず合格できるのかわからなかったので、早めに通わせることにしました」
小5になり、週3回の塾通いが始まると、優子さんにはママ友ができた。
「麻衣子さん(仮名・42歳)とは、待ち時間に世間話をするようになりました。麻衣子さんの娘の紗耶香さん(仮名・12歳)は、うちの子と同じ小学校。これまで同じクラスになったことはなかったのですが、塾で会うようになって娘同士もすぐ仲良しに。紗耶香さんは自分から中学受験がしたいと言って、小5から入塾したとのことでした」
望美さんは、小4まで上位クラスに在籍していたが、小5で勉強内容が難化しだすと、ランクダウンしてしまった。
「小5から授業時間が長くなり、覚える範囲も増えました。塾の受講者も増加し、娘の成績はボリュームゾーンと呼ばれる偏差値50前後をさまようようになったんです。これは娘に限った話ではなく、最初は上位にいた低学年から通っていた子たちが、だんだん途中入塾の子に抜かされていきました」
ママ友の娘は小5から入塾なのに上位クラスへ――「ほとんどサポートしていない」と言われた
一方の紗耶香さんは、最初、下位クラスにいたというが、小5の夏休みすぎからどんどん成績を上げ、ついに上位クラスに。テスト結果でも、10位以内に入り名前が貼りだされるようになったそうだ。
「中学受験は、伴走者であるママのサポートが重要。私は娘の宿題チェックや丸付けで大忙しだったんですが、紗耶香さんは自ら勉強して、丸付けもするそうで、麻衣子さんは『ほとんどサポートしていない』と言うんです」
中学受験は“親の受験”と呼ばれるくらい、親の負担が大きい。実際、子ども以上にテストの成績に一喜一憂し、精神的に追い詰められてしまうママも少なくないのだ。優子さんは「自分の娘と紗耶香さんを比べてしまいつらくなった」という。
「小5からの入塾で、うちよりも良いクラスに入っているのを見ると、正直モヤってしてしまうんです。それなのに、麻衣子さんは『紗耶香は塾がない日、友達と遊びに行っている』など、そこまで勉強一色ではないとアピールしてくる。しかも彼女は、小学校のママ友とのLINEグループでも、『自宅学習は土日だけで、平日は動画を見たりしている』『中学受験って大変だと思ってたけど、結構遊べるよ』と言うんです。私はもっと家で勉強をさせたいと思って四苦八苦しているのに……」
ママ友から「第一志望合格」のLINEが……まだ受験が終わっていないのに!
中学受験シーズンと呼ばれる1月に入ると、感染症予防のため、望美さんを2週間ほど学校に行かせなかったという優子さん。
「塾のママ友の中には、冬休みから中学受験が終わるまで小学校を休ませたという家庭もありました。うちも、少しでも長い時間、受験勉強をさせたかったし、インフルエンザの予防にもなると思い、休ませることに。正直、休むことで中学受験をすることが周りにも知れ渡るので、悩みました。でも紗耶香さんは第一志望の2月1日の直前まで、小学校に通っていたそうなのです……。麻衣子さんからは『うちはいつも通りの生活を心がけてる』というメッセージが来ました。自分が悪いことをしているように感じて、つらい気持ちになりましたね」
万全を期して臨んだ中学受験。しかし、望美さんは第一志望には不合格となった。そんな折、麻衣子さんからあるメッセージが届いた。
「娘は、2月1日と2日に受けた学校はいずれも不合格。慌てて、別の学校にも願書を出しました。中学受験の結果が全て出そろい、落ち着くのはだいたい2月10日以降。それまでは塾も合格者の名前を貼り出したりはしないんですが、麻衣子さんは、2月1日の受験が終わった翌日、LINEグループに『第一志望校に合格したよ』と送ってきたんです」
非受験組のママ友は、当たり前のように「おめでとう。紗耶香さんよく頑張ったね」と返信していたというが……。
「うちはまだ受験が終わっていないので、『おめでとう』と言いたくなくて……。非受験組のママは『中学受験で第一志望に受かるのは3人に1人』という現実を知らないから、素直に『おめでとう』と送っているのでしょうが、まだ合格をもらえていない立場からすると、その光景はかなりつらかった。それに麻衣子さんももう少し、ほかの受験組のママに配慮してもいいんじゃないでしょうか。そもそもうちは、合否が出ても私からはママ友に言わないでおこうと思っていたのに、麻衣子さんがLINEで堂々と発表してしまった手前、私だけ隠すのもおかしいかなって。かなり悩みました」
ママ友ウォッチャーが解説!
「ママ友には合否や進学先を言わなくてもいい」
少子化と反して、近年、受験者数が増加傾向にある中学受験。まだ幼い子どもが受ける受験だけに、どうしてもママのフォローは欠かせない。そのため、中学受験生の母は、子どもの合格を自分の手柄、不合格を自分の失態のように感じてしまう面がある。だからこそ、第一志望校に合格できればいいが、不合格だった場合、ママ友に知られたくないという心理が働くのだろう。
また高校受験や大学受験と違い、中学受験は「あえて受ける」という側面が強く、「わざわざ受験するのだから、難関校を狙うのが普通」という風潮もある気がする。塾の広告を見ても、難関校の合格者数を競っている向きがあるのだ。
しかし、中学受験ではボリュームゾーンの子どもが多数を占め、難関校に進学ができるのは上位数パーセント。そのような実情を知らない非受験組のママに、子どもの進学先を伝えたくないと思うママも少なからずいることだろう。
現状、ママ友に対する受験校や合否、進学先の伝え方(もしくは訊ね方)に関して、明確なルールは共有されていない。しかし、中学受験をするのが周知の事実であっても、受験生かその親が明かさない限りは、合否や進学先は訊ねないほうがいいのは間違いない。逆にいえば、受験した本人とその親が明かしたくなければ、そのようにして問題ないと思うのだ。
そもそも麻衣子さんのように、子どもの進学先や合格をすぐに伝えてくるママは、他人の合否にあまり興味がないような気もする。だから優子さんは、そのまま黙っていてもいいように感じた。
子どもが自主的に勉強する成績上位者の子を持つママは、ほかの家庭の子どもがなかなか勉強をしなかったり、成績が上がりにくいことをまず理解していない。合格の報告も身内自慢の範疇だろう。進学先が決まっていないうちは、そのような余裕はないかもしれないが、「おめでとう」とだけ返して、自分の子どもの合否に関してはスルーで大丈夫だと思う。
いずれにせよ、このような子ども自慢をするママは、一緒にいるとさまざまな場面で傷ついてしまう可能性が高いだけに、距離を置いたほうがいいのかもしれない。ただ、いくら悔しくても、相手の“子ども”に対しては、素直な気持ちで「すごいね」「頑張ったね」という言葉をかけてあげてほしいものだ。