フワちゃんの遅刻癖がテレビで重宝されるワケ――2023年「わかりやすさ」を武器にした女芸人たち
現代のテレビ界で、ひときわ強い存在感を放つ存在――女芸人。バラエティ番組で、男芸人の陰に隠れていた時代も今は昔。誰よりも前に出て、笑いを取る女芸人の姿は珍しくなくなったように思える。今回、サイゾーウーマンで「女のための有名人深読み週報」を連載中のライター・仁科友里氏が、2023年に特に気になった女芸人(女性お笑いタレント)を発表する。
11月16日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演した清水ミチコ。30代のお嬢さんが結婚して、娘夫婦が清水のライブに来てくれた話を披露していた。徹子が「珍しいわね、あなたがご家族の話をするなんて」と言ったところ、「今まで聞かれなかったものですから」と返していた。
長い芸歴を誇る清水だが、確かに、彼女に家族の話を振る共演者を見た記憶はないし、清水自身も自分から「聞いて聞いて」と話すタイプではない。もともと親交がある徹子だけに、清水もたまたま流れで家族の話をしたのだろうが、「“そういう時代”なのかもしれない」と気づかされたやりとりだった。
かつて芸人やお笑いタレントの売れ方というのは、ネタで注目され、賞レースやテレビのゲスト出演で結果を残し、番組レギュラーを増やすというのが、男女問わずスタンダードだったのではないか。清水も“ネタ”で評価されたタレントだけに、私生活がクローズアップされることはなかったが、今や、芸人やお笑いタレントがネタ以外の面で世間の興味を引き、人気につながることは当たり前の時代になったと思う。
このように、芸人やお笑いタレントの“売り”が多様化する中、活動のフィールドもかつてないほど広がっている。バラエティ番組だけでなく、情報番組、ドラマ、文壇で活躍する人も少なくないし、表現の場所も、テレビや劇場だけでなく、YouTubeチャンネル、SNSと多岐にわたるようになった。こうなると、芸人やお笑いタレントは媒体にあった見せ方を変えていく必要があるだろう。
そんな中、コンプライアンス意識が浸透してきた現代において、老いも若きも視聴しているテレビでは「わかりやすさ」が求められているのではないだろうか。つまり、幅広い層の共感を呼ぶ人、もしくはその逆で幅広い層から批判されるような人こそ重宝される時代なのだと思う。そこで今回は、今年「わかりやすさ」を武器に、テレビ界で輝いた女芸人・女性お笑いタレント3名を挙げてみたい。
横澤夏子:「母というわかりやすさ」
12月16日放送の特番『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)で見事優勝者となった横澤。時代に合わせたのか、それとも母となっていろいろ心境の変化があったのか、彼女のネタ(女子あるあるネタや個性的な女性のものまね)の毒はかなり薄目となっていた。
3児の母であることがプラスに働いたのだろう、横澤は藤本美貴と共に、ママ特化型バラエティ『夫が寝たあとに』(テレビ朝日系)のMCに就任した。タイトルからして「夫が育児で役に立たない」というような悪口を言うのかと思ったが、ゲストを迎えて、「おしゃれな靴を息子に買ってあげたのに、滑らないところでスライディングするものだから、1日で靴がボロボロ」というような育児あるあるを披露する。育児中の女性で夫にイラッとしない人はいないと思われるが、面白く夫の悪口を言うのは腕がいるし、一歩間違えれば炎上しかねないから、このくらいがいいのだろう。
正直物足りなさも否めない。しかしおそらく今後、横澤は育児のちょっとした愚痴エピソードを明かすのではないか。夫に対する愚痴とは違い、「とはいえ、わが子はかわいくて仕方ない」と、視聴者もわかりきっているわけだから、誰もが安心して見ていられるだろう。
ちなみに横澤は18年の『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)に出場する際、その理由を「賞金の1000万円を使って、ルミネtheよしもとに託児所を作りたい」と話していた。優勝は逃したが、賛同する企業の支援を受けて、実現したという。「育児のことなら横澤」と言われ、テレビ界で重宝される日は近いのではないだろうか。