中学受験で全校合格、しかしすぐ不登校に……「半狂乱になった」心配性の母親の告白
それから、美香さんは舞華さんを見守ることを最優先課題とし、家の中で、指示語や命令口調、詰問する態度、そして、舞華さんの気持ちを一方的に決めつけ、先回りして行動すること をなくすように努めたという。すると、少しずつではあるものの、舞華さんから“リクエスト”のような言葉が出てくるようになったそうだ。
「すごく小さなことです。例えば、夕飯のメニューについて、前までは『何でもいい』と言っていたのに、『ポテサラが食べたい』と言われるようになったり、それに『〇〇のライブに行ってみたい』という希望を口にするようになったんです。考えてみたら、それまで舞華から『○○を食べたい』『〇〇に行きたい』と言われた記憶もないんですよ。いつも私から『〇〇食べる?』『○○行く?』って感じで聞いていたので……」
美香さんはカウンセリングを受けているうちに、「私がいつも先回りしていたため、『舞華は自分の好きなことや何をしたいのかを、考えることすら なかったのかな?』と気づき、本当に反省しました」という。
舞華さんは、ほとんど学校に通えないまま、中2の3学期を終えたそうだ。その時、学校側から「このままでは、併設高校への推薦資格は与えられない」との通告を受け、熟慮の末、地元公立中学に転校の手続きを取ったという。
「正直、『絶対に行かないだろうな』と思っていたんですが、口には出しませんでした。ところが、舞華がいきなり『私は変わる!』と言い出して、なんと中3の春から、地域の公立中に通うようになったんです。地元の塾にはずっと通っていたので、塾友はいたんですが、学校側が舞華と彼女たちを同じクラスにしてくれたんですよ。そのご配慮も 大きな後押しになったんだと思います」
そして、舞華さん自身の強い希望で、芸術分野に強い高校に合格。「自分の好きな分野を思いきり学んでみたい」と舞華さんの思いは見事結実した。
「舞華に言われたんです。『ママが私のことを信用して任せてくれているのがわかって、頑張ろうと思った』と。特に、子どもの進路選択の時は、良かれと思い、親の気持ちを押し付けがちですが、それって“余計なお世話”なんですよね。中学受験当時の舞華には申し訳ないことをしました。でも、そのことに気づいて、舞華がいま自分の希望する高校に通えていることは本当に よかったです」
最後に、美香さんが晴れやかな笑顔でこう言った。
「これからは、私も舞華を見習います。『私が本当にしたいことは何なのか?』を考えて、それをちょっとずつでも実行していこうと思っています」
現在の舞華さんは不登校だった過去を忘れるほど、学校生活をエンジョイしているという。