“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験、国語の長文問題を投げ出す「精神年齢が低い息子」が覚醒したワケ

2023/10/28 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

オンラインゲームをする小学生の画像
写真ACより

 「中学受験は精神年齢が高い子のほうが有利」とは、よく耳にする話だ。その理由は明快で、12歳の受験だから。言わずもがな、受験に挑む(しかも、かなり過酷な勉強をしなければならない)のは小学生だが、この年代の成熟度は個々人で大きく違うのである。

 中学受験における精神年齢の高さは、「自分自身を客観的に捉え、コントロールできる」という面で、有利になる。つまり精神年齢が高い受験生は、目標に向けて、いま何をすべきかを把握でき、また良い結果でも悪い結果でも、冷静にその原因を考える“癖”がついているので、気分や周囲に流されず、やるべきことを淡々とやりきることができるのだ。そうすれば当然、超難関校の扉が開きやすくなるのである。

 もし、小学生の我が子に、この力がすでに付いている、もしくは、片鱗が見られるならば、中学受験を経験させてあげてもいいかもしれない。

 しかし、悲しいかな、上記のような子どもは“トップ・オブ・トップ”、ごくごく一握りしか存在しない。たいていの子どもには、大人でも難しい自己コントロール力なんてものはなく、年相応に幼いのが当たり前だ。


 当然ながら、中学受験は必須の受験ではないので、親から見て「まだ早い」と思えば、高校受験にシフトしても何の支障もない。ところが現在、中学受験は過去最高の受験率を更新し続けている。裏を返せば、「受験に有利」とは言えない子どもたちも数多く受験しているのが現実だ。

 そんな中、親の多くは「この道で本当にいいのだろうか?」と苦悶しながら、我が子を忍耐強く見守り続けているのだが、ある日を境に突然“覚醒”する子がいるのも事実である。

中学受験、模試の偏差値に波……「低い時と高い時の差が20以上」

 今年、中学1年生になった息子を持つ敦子さん(仮名)も、まさに「胃に穴が空く」思いをしながらの受験生活だったと振り返る。

「息子の悟志(仮名)は一人っ子で幼く、しかも気分にムラがあるタイプ。そのせいか、6年になる直前くらいになっても偏差値が安定せず、低い時と高い時の差が20以上もあり、どの成績を信じればいいのかもわからなかったほどです」

 悟志君は得意科目である算数の勉強はするものの、国語には苦手意識があり、模試であっても、気乗りしない長文問題が出てくるとお手上げ状態に。その時の結果は敦子さんいわく「この子は本当に、日本語を母語としているのか?」と思うほど悪い成績だったそうだ。


 塾の先生からは、「精神年齢が幼い子の読解力はそんなもんです。悟志は遅咲きですから、本人が覚醒すれば化けますよ」と言われたものの、まったく信じられず、悟志君よりも敦子さんのほうが心折れるような状態だったという。

「悟志には何度も何度も言いました。『作者の意図どころか、問題文も読みこなせないようでは第1志望のA中学はもちろん、どこにも受からないよ! 中学受験はやめよう』って。でも、悟志が『オレは絶対にやめない!』って言い張るんですよ。だったら、どうにかしろよ! って思うんですけど、いつも勉強よりゲームに熱中している有様で、途方に暮れました」