仁科友里「女のための有名人深読み週報」

飯島愛さんが作った“ギャルタレント”の道筋――テレビで彼女たちが重宝される理由

2023/11/30 21:00
仁科友里(ライター)

「本当は頭がいい」飯島愛さんが築いたギャルイメージ

 芸能界でギャルの道筋を作ったのは、飯島愛さんだろう。茶色い髪に日焼けした肌はまさにギャルのスタイルであり、加えて「学校をサボっていたために漢字が読めない」「ことわざを知らない」などのおバカ路線で人気を博した。しかし、彼女の頭の回転の速さは誰もが認めたところ。のちに飯島さんは政治や経済の勉強を始め、番組内のコーナーを任されるまでになる。これは飯島さん個人の資質であるが、「ギャルは本当は頭がいい。やればできる」というイメージにつながったのではないか。

 ギャルタレントのイメージは、時代と共にさらに変化していく。6月23日放送『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)には、浜田ブリトニー、藤田ニコル、舟山久美子、益若つばさ、ゆきぽよ、ゆうちゃみ、ゆいちゃみら幅広い年齢のギャルが出演していた。ギャルは誰に対してもタメ口の印象が強い一方、その世界は上下関係が厳しいため、礼儀を叩き込まれると話していた。

 あのちゃんのように、見た目はギャルではないものの、目上の人に敬語を使わないタレントが出てきたこともあって、今の時代は「ギャルはフツウのタレントよりも礼儀正しい」というイメージに変わりつつあるように思う。華やかで元気があり、大御所相手にも臆せず、かといって失礼を働かない……そんなギャルタレントは、番組を制作する側からすれば、重宝するといえるのではないだろうか。

ゆうちゃみに見る「意外にちゃんとしているが完ぺきではない」ギャルタレントの姿

 そしてもう一つ、ギャルが重宝される理由があるように思う。11月28日放送の『やすとも・友近のキメツケ!※あくまで個人の感想です』(関西テレビ)に出演していたゆうちゃみは、「第一印象は悪いほうがトク」と持論を語る。

 「ギャルって結構、偏見で『何もできない』とか、第一印象が良くない」と切り出したゆうちゃみによると「悪いほうがトクじゃね? ってことがあって。ギャルイコール何もできひんで、周りが勝手にやってくれる」「ギャルでハードルが下がってすぐ褒められる」とのこと。同番組司会の海原ともこも、ゆうちゃみに会った時に「あの子すごいで。敬語しゃべれる」と思ったそうだ。


 そんなふうに褒められたゆうちゃみだが、同じくゲストのチュートリアル・福田充徳に「でも、さっきメイク室でベテランのメイクさんにガンガンタメ口でしゃべっていましたよ」と人によっては敬語を使っていないことを暴露される。ゆうちゃみいわく、「めっちゃ仲良い」かららしい。

 もし清純派と呼ばれる女性タレントや女子アナが、テレビではちゃんと敬語を使っているのに、裏方であるメイクさんにはタメ口だったと聞かされたら、なんとなく「ウラがある人」のような印象を受けてしまわないだろうか。

 しかし、ゆうちゃみがメイクさんにタメ口だったと聞かされてもあまり驚かないというか、「そういうこともあるだろう」と思えてしまう。本格的なイメージダウンにならないとわかっているからこそ、福田もゆうちゃみに関する小さい暴露ができたのだろう。

 誰もがスマホを持つ時代、芸能人は常に暴露の危機に晒されているといっていいだろう。優等生イメージが強い人ほど、暴露された時のダメージは大きくなることは想像に難くないが、そんな中、ギャルタレントの「意外にちゃんとしているが完ぺきではない」という在り方は、ダメージを最小限に減らし、生き残るのに最適なスタイルなのかもしれない。テレビはこういったリスクの少ないタレントこそ起用したいと思うであろうことを考えると、ギャルタレントは今後もバラエティ界を席巻し続けそうだ。



仁科友里(ライター)

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2023/11/30 21:00
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