【中学受験】御三家を狙うわけでもないのに……エリート塾に入れたがる親への違和感
――難関校に入れたい親がそれだけ多いということなんでしょうか。
杉浦 それがちょっと違うんですよね。取材をしていると、多くの塾の先生たちが「御三家や駒場東邦、豊島岡といった難関校を狙うわけでもないのに、なぜサピックスやグノーブルに通わせる保護者がいるんだ?」と頭を傾げるんですが、その疑問の答えは「ブランド力に引き寄せられる」なんです。
難関校の合格実績が高いと、その塾のブランド力が上がります。そうすると、そのブランドに引き寄せられる人たちが出てくる。アウトドアグッズの「ノースフェイス」のリュックもトップスターたちが持っていたことでブランド価値が上がって、みんなが持ちたがるようになりました。それと同じです。そして、サピックスよりちょっと通好みなブランドだから、子どもを新興エリート塾に入れる――そういう親御さんが今年は増えた印象もありますね。
――名門校というブランドを求めて中学受験をする層は確かにいると思いますが、塾にもそれを求めているんですね。
杉浦 「名門校ブランドを得たい」という人がいるのは想定内ですよね。中学受験はペーパー入試一本勝負なので、庶民の子でも勉強して学力を上げ、名門校に合格すれば、そうそうたるセレブリティの子女と同級生になれるわけですから。でも、取材をしていて新たに発見したのは「子どもをブランド力が高い塾に通わせること」に価値を見いだす親御さんがいることでした。もちろん、一部ではありますが。
中学受験生の親御さんにインタビューしていた際、小さな個人塾に通う学力上位層生徒のママさんがこんな話をしていました。
「“開成の文化祭に行って楽しかった”という話を私がしたら、“小さな塾の子も開成の文化祭に行くのね”みたいなことを、サピックスママにいわれたんですよ。でも、うちの子の塾、毎年、開成合格者が出てるんですよ。あとで知ったんですが、そのママの子は偏差値がうちの子より下だったみたいで。無名の塾の生徒のくせに生意気ね! ってことだったんだろうなあと」
このサピックスママは「サピックスのブランド力に引き寄せられている」親御さんで、小さな個人塾に通う生徒さんの親御さんに対して、謎の優越感を持っていたのでしょう。そんな親御さんもまれにいるわけです。