サイゾーウーマンカルチャーインタビューエリート塾に入れたがる親への違和感 カルチャー インタビュー 【中学受験】御三家を狙うわけでもないのに……エリート塾に入れたがる親への違和感 2023/11/23 16:00 杉浦由美子(ノンフィクションライター) 中学受験 『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社) ここ数年、メディアで「史上空前のブーム」といわれるようになった中学受験。首都圏模試センターによると、2023年入試の受験者数は、私立中学と国立中学を合わせて5万2,600人、受験率は17.86%で、いずれも過去最多・最高を記録した。 少子化の中、1人の子どもに掛けられる教育費は上がっていることを考えると、今後も中学受験は厳しい競争が続くと予想されている。 しかし一方で、今年トップ塾のSAPIX(サピックス)について「空席のある校舎が目立つ」と、ネット上で話題になるなど、中学受験の受験者数は来年もしくは再来年がピークで、その後は減少するといわれているのはご存じだろうか。 いま、中学受験塾業界では一体何が起こっているのか――『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)の著者でノンフィクションライターの杉浦由美子さんに話を聞いた。 中学受験ブームなのに……2023年サピックスに「空き」があったのはなぜ? ――過熱する一方に思えた中学受験ブームも「ピークアウト」といわれていますが、実際にはどうなのでしょう。 杉浦由美子さん(以下、杉浦) 2024年は横ばいかやや減るかもと推測されています。受験が激化すると、敬遠する層が出てきて、受験者数は減少します。ただ、急激には減らないでしょう。中学生の不登校が増えている中、中堅の私立中高一貫校はそのあたりへのケアが手厚いところも多いので、そういう学校に入れようと思う親御さんも増えています。そのためか、中堅校対策に長けた大手塾は入塾者が減ってないとのことです。 ―― 一方、2023年はエリート層向けの塾であるサピックスの各校舎に「空きがあった」と話題になりました。例年ですと秋ぐらいからどんどんと埋まっていって、2月には大半の校舎が満席になったのに、今年はそうはならなかったとか。トップ塾がそうだと、全体的な入塾者数も減っているんだと思っていました。 杉浦 それは単純にサピックスが「受け入れ数を増やしたから」という理由もあると思いますよ。特に低学年の制限は解除しているようですし、それで定員に達しなかったのではないでしょうか。ただ、サピックスはご存じのように家庭での勉強量が多く、それを親御さんが管理する必要があるので負担は大きくなります。そのため、ほかの面倒見がいい塾に生徒が流れているかも知れません。実際、早稲田アカデミーは23年6~8月の中学受験部門の生徒数が前年同期比0.4%増です。 いまどき、私立中高一貫校に子どもを通わせられる経済力があるのは共働き家庭ですからね。塾で全部やってくれる「面倒見がいい塾」のニーズは増えています。 ――では、塾選びのトレンドは「面倒見のいい塾」なんですね。 杉浦 いえ、そうとも言い切れません。サピックスも空きがあるといっても、そんなに減っていないでしょうし、昨年より増えている校舎もあるようです。ただ、サピックスの存在が大きくなりすぎたことに反発して、ほかのエリート塾を選ぶママやパパも増えているのは確かなんですよ。 その筆頭がサピックスの講師の方々が独立して立ち上げたグノーブルという塾。メソッドはサピックスとほぼ同じで、学習の大半を家庭でやるスタイルです。それに加えて、社会の進度はサピックスより速いし、国語で扱う文章も高度なのでハード。実際、ある大手塾の幹部が「関東で最も学力が高いのはグノーブルの最上位クラスの生徒たち」と話しています。それだけ学力を伸ばす力は高い塾ですが、テキストはサピックス同様に難関校対策に最適化しているので、目標の学校によって、合う・合わないがあると思います。 次のページ 「聞いたことない塾の子が開成の文化祭に行くなんて」とサピックスママにいわれる 123次のページ 関連記事 中学受験、塾費用は「月20~30万円」が平均の時代に? 共働きママが「狂気を持ったATM」と化すのはなぜか「ボリュゾ」の中学受験はなぜ大変? 「絶望しかなかった」平均偏差値49の母の実体験中学受験、国語の長文問題を投げ出す「精神年齢が低い息子」が覚醒したワケ中学受験、小6秋の模試で「合格率20%以下」――「親が第1志望校を変更」の過去を引きずる28歳女性中学受験、小6秋なのに志望校が決まらない! 焦った母が取った行動と待ち受けた“サプライズ”