元美容師が語る「髪質改善」施術の裏側【前編】

「髪質改善」とは? デメリットなしでも「絶対おすすめ」と言い難いワケ【元美容師が徹底解説】

2023/11/12 11:00
AKKO(ライター)
写真ACより

 近頃、よく見聞きする「髪質改善」という言葉。SNSで美容師が、施術前の髪と、施術後にツヤツヤ&サラサラになったビフォーアフター動画を投稿しているのを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

 この施術、果たしてどれほど効果が期待できるものなのか、サイゾーウーマンで「ドラスト・ヘア用品レビュー」を担当している元美容師のAKKOさんに、得られる効果や施術を受ける際の注意点について解説してもらいました。

【目次】
「髪質改善」と「縮毛矯正」の違い
髪質改善トリートメントは2種類
髪質改善のデメリット
髪質改善トリートメント、「絶対おすすめ」と言えないワケ

「髪質改善」とは?

 近年、髪質改善に特化したサロンが増えつつあります。髪質改善とは、紫外線やヘアカラー、パーマなどのダメージで現れる髪トラブルの数々を解消する画期的な施術メニューのこと。

 単刀直入に言うと、「トリートメント」のジャンルに部類され、薬剤によって毛髪内で化学反応を起こして髪質自体を改善するケア方法です。当然ながら、一般的なトリートメントとは違い、髪質そのものを改善できるので、ハイダメージでお悩みの方はお試しする価値が十分にあります。

「髪質改善」と「縮毛矯正」の違い

 よく、「縮毛矯正」と混同されがちですが、髪質改善は、あくまで髪のダメージを修復し美髪に近づけるという施術方法。使用されるトリートメントにはアミノ酸や保湿成分などのダメージケア成分が配合されているため、傷んだ部分を徹底的に修復していきます。

 トリートメントの効果は約1カ月前後持続するといわれていますが、効果がなくなる前の再施術がおすすめ。そのため、サロンによっては最初から3回コースのセットメニューを導入したり、継続的な施術を促しています。

 一方の縮毛矯正は、「ストレートパーマ」に属し、薬剤(1剤)の力で髪の内部結合を切断し、ヘアアイロンで再結合をさせ髪のクセを伸ばして整え、2剤で定着させます。施術後はサラサラのストレートヘアとなり、湿気によるうねりや寝グセの心配もご無用。

 見た目には違いの区別がつきにくいですが、髪質改善とは構造的に異なり、髪へのダメージがあることも知っておいていただきたいポイントです。

髪質改善トリートメント、広く取り扱われているのは2種類!

 髪質改善トリートメントは、髪内部の結合を修復することで、ダメージ毛にツヤやハリ・コシを与えます。施術後は髪の広がりやクセが抑えられ、サラサラとまとまりが良くなるのが特徴です。

 トリートメントにはさまざまな種類がありますが、中でも酸性の成分を含む「酸熱トリートメント」と水素成分を含む「水素トリートメント」が広く取り扱われているようです。それぞれ髪質やダメージ度合いによって使い分けられ、効果が発揮しやすい髪のタイプも異なります。

酸熱トリートメント、おすすめはハイダメージ毛の人

 まず、酸熱トリートメントは、その名の通り、酸と熱の効果で髪にツヤを出すのが特徴。ダメージでボロボロになった髪に新たな結合力を作り出し、なめらかで光輝くツヤツヤの髪へと導きます。ダメージによる広がりやうねりも改善され、湿気や乾燥にも耐える強い髪を手に入れることができます。特に、カラーやパーマでハイダメージを受けている方は施術後に最も効果を実感できるでしょう。

水素トリートメント、おすすめはバージン毛の人

 水素が髪や地肌の悪玉活性酸素に反応して無害化してくれる「抗酸化」を利用した水素トリートメントは、髪の水分量が調節され、こちらも酸熱トリートメントと同様にパサつきを抑えつつツヤが生まれ、驚きの仕上がりを手に入れることが可能です。

 こちらはバージン毛の方におすすめ。より美しい髪にして維持するためには、水素トリートメントがぴったりかもしれませんね。

処理の仕方は、薬剤のメーカーやサロンによってさまざま

 髪質改善トリートメントは、熱源を要するものもあれば、完全放置のタイプもあり、種類が豊富。縮毛矯正のように1剤と2剤を塗布してアイロン処理を行うものもあります。薬剤のメーカーによってさまざまな考え方があり、サロンによって捉え方も異なるからです。これについては後述で説明していきます。

髪質改善、デメリットは?

 髪質改善において、デメリットは特にないといえます。あくまでも、100%トリートメントであるならば、やって無意味ということにはなりません。ただ、アイロン処理を行うメニューの場合、技術者の経験と技術が必要とされ、持続性や効果については賛否あります。

 注意したいのは、「一度死んでしまった髪をよみがえらせることは不可能」ということ。過去にあるテレビ番組で、50万円ほどの髪質改善トリートメントが紹介されていたことがありますが、この施術を受けたとしてもバージン毛のような健康な髪には戻りません。あくまでも、髪質改善トリートメントは“ケア目的の施術”ということを念頭に置いてください。

髪質改善トリートメントは「絶対おすすめ」と言えないワケ

 サロンでの施術は専門的な技術を必要とするため、それなりの料金が発生します。これもサロンによってさまざまですが、だいたいの相場は5,000円前後が多いようです。 5,000円を超えるとアイロンなどの施術工程がプラスされる傾向にあります。また、 1万円を超えるともなるとそれなりの効果が感じられ、 満足された方々の口コミも拝見できました。

 このトリートメントメニューはサロンにとっては大きな収益になります。それは、価格のわりに施術時間や手間がかからないから。縮毛矯正などに比べて薬剤の使用量も少ないはずです。メーカーにもよりますが、塗ったあとはほとんど放置するだけ。前述のように、中にはアイロン処理を行うものもありますが、縮毛矯正に比べれば手間いらずなので、サロンにとって髪質改善トリートメントは、売り上げを左右する施術といっても過言ではありません。

 私のこれまでの経験を踏まえると、トリートメント関連のメニューは、思ったほどコストがかからない上、施術後の手触りの良さでほとんどのお客様が納得されて店を後にしますから、その場でのトラブルもほとんどみられません。お店にとっては好都合なメニューでありながら、金額が効果に比例するかといったらそうともいえず、この点が引っかかり「絶対おすすめ」とは言い難いのが本音です。

 単発的な施術は無駄になってしまうこともありますので、本気で髪質を改善したいのならば一定期間の継続的な施術と、丁寧なホームケアを心がけましょう。

*引き続き後編では、サロン選びのコツなどを紹介します。



AKKO(ライター)

AKKO(ライター)

山野美容専門学校卒業後、美容師として10年以上現場を経験。およそ2万体近くのヘアーと向き合う。一線を退いた後、成人式や七五三、特殊セットなど、これまで疎遠だったジャンルへ地味に進出する傍ら、2016年にライターへ転身。これまで培った知識や経験を生かしながら、美容情報を発信している。

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最終更新:2023/11/12 11:17
綺麗になるにはお金がかかるね……
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