サイゾーウーマン編集部座談会

ジャニー氏の“暴露本”記事を量産……「PV優先で被害者の人権無視」サイゾーウーマンの反省点

2023/10/23 16:00
サイゾーウーマン編集部

ジャニー氏の記事を削除、「その場しのぎだった」という反省も

ジャニーズが10月2日行った記者会見に登壇する井ノ原快彦と東山紀之の画像
2023年10月2日の会見で、今後の方針について明かしたジャニーズ事務所(C)サイゾーウーマン

B ここからは、今回の問題を経て、サイゾーウーマンはどのような姿勢で記事を作っていくべきか、今後の課題は何かという話をしたいです。

A ジャニーズ事務所は、「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたいと思います」と宣言し、社名を変更しました。それを受け、ジャニー氏を面白おかしい愛嬌のあるキャラとして描いていった4コママンガを、私は一旦サイゾーウーマンから削除したんです。

 ただ、今になって「その場しのぎの対応だったんじゃないか」とも思っていて……。というのも、自分の中でジャニー氏の性加害問題をどのように受け止め、向き合い、媒体としてどう取り扱っていくかとことを明確に決めない状態の中で、「事務所がそう言ってるし」「スポンサー離れが始まったり、社会的にもそういう流れだし」とか。ジャニーズに距離が近い人間ほど、冷たい目を向けられているという状況を受けて、その場しのぎで消してしまったではないかと、今になって反省というか、自戒というか、いまだに悩み続けてるところです。

B ジャニー氏をモデルにした架空のキャラクター「ジョニーさん」が、タレントを紹介する企画もありましたよね。「美少年軍団のドンが送る、愛するカレへのラブレター──泣く子も黙る芸能界のドンであるジョニーさんに、大好きな男のコのコト、いろいろ聞いちゃえ!!」というリードで、事務所が性加害はあったと認め、謝罪している中、この記事を載せ続けているのはきついかなと、正直思っていました。

A ジャニー氏のお墓参りガイドという記事もありますが、本当は……っていうか、社会的には消したほうがいいと思いつつ、もっと慎重に、明確な考えを持った上で削除する記事を決めたい。その上で、何が指標になるかというと、第三者の専門家から自己検証の仕方を教えていただいて、その上で、削除す記事、そのまま掲載を続ける記事、あるいは時代背景などを踏まえた加筆修正を行う記事等を、判断していきたいと思ってます。

C 10月4日発売の「日経エンタテインメント!」(日経BP)で、KinKi Kids・堂本光一が、「自分の表現や作る作品には、どうしたってジャニー氏の影響が含まれてしまいます。今後、そのイズムすら消し去るべきだと世の中が言うのであれば、僕にできることは何もない」と話していました。

 脱ジャニーズの流れの中でこの発言を聞き、私はちょっと安心したんです。ジャニー氏の性加害は、当然許されるべきことではないですが、同氏の作品には、多くのジャニーズタレントが携わってきたわけで、それがすべてなかったものとして扱われるのは、非常に寂しいと思っていたから。サイゾーウーマンは、ジャニオタが読む媒体と思っているので、そういったファンの声をすくい上げて、記事にすることもできるんじゃないかなとは思います。

B ファンじゃない人は、タレントに対し、これまでのことをすべて捨てて再スタートを切ればいいと思うかもしれませんが、ファンはそんなに簡単に割り切れないですよね。東山紀之社長が会見で、記者からジャニー氏への思いについて問われた時、「彼には僕は愛情はほとんどありません。鬼畜の所業」と言ってましたよね。あの場においては正しい回答だったと思う一方、本当にそこまで割り切れているのかと衝撃を受けてしまって……まだ迷いの中にいるファンは多いと思います。

A 割り切れないファンが、被害者叩きに走っているように感じます。ジャニーズファンにとって心の支えであるジャニーズは、ある意味“宗教”。そのトップが世紀の犯罪者だったとわかったいま、ファンの心のケアも必要だと思います。というか、私個人がそのケアを必要としているので記事にしたいですね。

 一方、ジャニー氏の性加害問題は、カトリック教会の司祭らが組織的に数千人の児童に性虐待をしていた事件と重なります。圧倒的な権力者がいる閉鎖的な場で性虐待が行われていたという点はもちろん、被害に遭った子どもたちは司祭、そしてキリスト教を、一方でジャニーズのタレントも、ジャニー氏またジャニーズ事務所を、信じているという共通点もあると感じます。

 カトリック教会の事件によって傷ついた子どもたちが、どのようなケアを受けているのか。また、信者たちの信仰心へどのような影響があったのか。そしてマスコミがそれをどういうふうに報道しているのか。今後、ジャニーズ事務所のことを報じる上で参考になるのかな、と思っています。

C 被害者の中には、性被害だけでなく、連日の報道や世間からの誹謗中傷に傷つき、テレビやSNSから離れたという人は多いはず。そういった方たちに事務所はどんなメンタルケアをすべきなのか、専門家に取材をするなどしてみたいです。

B 私はやっぱり、被害の生々しい詳細を伝える記事ではなく、性加害を生んだ構造的な問題について考える記事がもっとあっていいと思っています。井ノ原快彦副社長が、最初の会見で「僕や部下が権力を持たないような仕組みっていうのは、みんなで考えていかなきゃいけない」と発言していたんですけど、正直、Jr.を統括するトップであることには違いないし、「権力を持たないようにするって、具体的にはどうするんだろう」というのがよくわからなかったんですね。

 最初の会見後、井ノ原が人格者だと持ち上げられていたのも気になっていて。2回目の会見で、“子どもが見ているから、皆さん落ち着きましょう”と発言したのが物議を醸しましたけど、彼がカリスマトップのように神格化されてしまうんじゃないか……というのは気がかり。ここはしっかり追っていきたいところです。

A マスコミは今後、そこを監視する立場だと思います。ジャニーズに限らず、芸能界の構造の問題として取り上げるやり方もあるのではないでしょうか。

ジャニオタがエンタメを楽しむ権利を奪われてはいけない

A 一方で、ジャニオタがエンタメを楽しむ権利を奪われてはいけないとも思っています。サイゾーウーマンはどこまでもジャニオタのサイトなので、タレントにまつわるエンタメ記事は「なにのんきな記事出してんだ」と言われても、今後も出しますよってことは、はっきりお伝えしておきたいです。ジャニオタのタレントに対する愛も、事務所への怒りや不満も、サイゾーウーマンが“拡声器”となって伝えられたらと思います。

B ファン目線での楽しい記事も作るけど、組織に対して、また時にタレントに対しても問題意識を持ち、追及していくというのは、前からやっていたことではあります。例えば、「ジャニーズのこの曲は最高!」と称賛する一方、『NHK紅白歌合戦』のジャニーズ枠が年々増えていったことについて「圧力や忖度はないのか」と疑問を呈するとか。特にSMAP解散騒動時、事務所に批判的な記事を出せたことはよかったと思っています。

A そうですね。そこの姿勢は崩さずに。それに加え、繰り返しになりますが、対象へ偏向した目線を向けていないか、常に編集部員全員が自覚的にやっていかないといけないなと思います。

 今、ジャニーズと親しくしてたメディアは身の振り方を考えなければいけない状況で、逆に敵対関係にあったメディアは、このまま自己検証せず、突き進んでいくのかもしれませんが、サイゾーウーマンは血の通ったオタクの媒体であるのと同時に、マスコミの一端という自覚を持ち、自己検証も進めていく。変な言い方ですけど、“健全”になるような気がしています。

C そう考えるとある意味、サイゾーウーマンはフラットな媒体ですよね。そういえば、ジャニオタの間で出回っている「要注意メディア一覧」にサイゾーウーマンが入っているんですが、そういうネガティブなイメージも変えてきたい。決して盲目的にはならず、引き続き問題提起もしっかりしていきながら、タレントたちや事務所を見守っていきたいです。


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最終更新:2023/10/23 16:00

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