サイゾーウーマン編集部座談会

ジャニー氏の“暴露本”記事を量産……「PV優先で被害者の人権無視」サイゾーウーマンの反省点

2023/10/23 16:00
サイゾーウーマン編集部

ジャニー氏の性加害問題が「こんな大騒動になるとは思いもしなかった」

ジャニーズが9月7日に行った記者会見に登壇する、井ノ原快彦、東山紀之、藤島ジュリー景子氏、木目田裕弁護士の画像
2023年9月7日開催の記者会見で、ジャニー氏の性加害を正式に認め、謝罪したジャニーズ事務所(C)サイゾーウーマン

B Cさんは“暴露本”記事の担当はしていなかったですが、性加害問題が表面化して以降、ジャニーズ記事の編集をしています。ジャニー氏の性加害についてはどのように見ていましたか?

C ちゃんと認識するようになったのは、サイゾーに入ってからです。それまではいちファンとして、ジャニー氏のことを“いろんな子たちを見いだしてきた社長、プロデューサー”として見ていて、タレントたちが話す“面白エピソード”も楽しんで受け取っていました。その後、サイゾーウーマンに携わるようになって、実際に担当してはいなかったものの、“暴露本”に関する記事に触れるようになったんですが、なんかこう……深追いはせず、要点だけを把握しようとしていた部分が、自分の中にありました。多分ほとんどのジャニーズファンがそうだと思うんですよね。知りつつもみんなスルーしてきたという。

B 昨年11月に、元Jr.のカウアン・オカモトがYouTubeでジャニー氏の性加害を明かした際の記事も担当していたけれど、その時はどうでしたか?

C 正直、カウアンが“暴露”しだした時は「なんか言ってるよ」ぐらいにしか思ってなかった部分はあって。まさか1年後にこんな大騒動になるとは思いもしなかったです。記事を作りながら、世間やファンの声を知り、「あ、これはスルーしてはいけない問題だ」と思っていった感じで、逆にこういう仕事をしていなかったら、もう「何も考えたくない」って、情報をシャットアウトしちゃっていたかもしれません。

A Cさんはジャニオタだけど、私とは違って「全て知りたい」というわけではなかったんですね。

C ゴシップ記事は割と好きなんですけど、 ジャニー氏の性加害問題に関する話は苦手というか、性に関する話題に、あんまり触れたくないっていうところはあったと思います。被害者が存在することや、事務所やタレントたちの未来を揺るがす問題だとわかっていたものの、やっぱりどこかでジャニー氏の裏の顔を信じたくないという気持ちがあったのかもしれません。

 ただ、ジャニーズ情報を扱う者、またジャニオタとしては、遅かれ早かれ、きちんと向き合わなければいけない問題なので、その時が来たという思いでした。そして自分自身に対して「なぜ今まで目を背けてきたのか」と疑問を持つべきだったんだなと、いますごく反省しています。

同性愛嫌悪、男性の性暴力被害に関する知識のなさが露呈した

B PV優先で被害者の人権を無視した記事を出した、また、そもそも重大な問題を「見ないようにしてきた」という2つの問題点が見えてきました。これは、ジャニーズ記事に限ったことではなく、例えばかつては、同性愛者とうわさされるタレントのイニシャルトークや、女性芸能人の劣化記事など、人権意識に欠けた企画を多数掲載してきたんですよね。いま考えると本当にあり得ないんですが……やっぱり芸能人を自分と同じ人間だと思っていなかった。彼らは権力を持っている強者だから、こういうことを書かれてもしょうがないと。

A いわゆる有名税っていう言葉で片付けられていたかな。

B そうなんです。あと、劣化の記事に関しては、「美しくあることも芸能人の仕事だし、それを怠るっていうのは、ドラマ撮影に台本を覚えてこないことと同じことじゃない?」と、自分の中で正当化させていました。

A でも、劣化の記事に関しては、私とBさんで結構すり合わせというか、全面的に「GO」っていう感じではなかったですよね。PVがすごく悪かった時期で、とにかく数字が取れる記事を……と始めたんですが、私としてはやりたくなかったんです。劣化という言葉には、女は見た目と若さに価値があるとする男性社会の目線があると思うから、当然、抵抗はありました。それに過去に自分が、周りの男性から投げつけられた言葉や目線に傷ついたことを思えば、同じことはしたくなかった。そこに関しては、結構、自覚的ではあったんだけれども、それよりも数字を追ってしまった。

B 私は男性社会で傷ついてきたがゆえに、ここで生きるために適応しなければと、ミソジニーを内面化させていたところもあるんです。でも本当の敵は女性ではなかったのだと、今は感じています。

A 劣化記事については、その後、能町みね子さんに叩かれて……「やっぱり言われちゃったな」と。でも、そこで思うのは、女性芸能人に劣化という言葉を使う記事には違和感を持てたのに、ジャニー氏の性加害の“暴露本”記事に関しては、なぜずっと「面白い」「数字も取れる」といって、“量産”してしまったのか。今になってその非対称ぶりがいま、自分にすごく突き刺さってきます。

C 男女を入れ替えると感じ方が違うというのはありますよね。私はハロー!プロジェクトのアイドルも好きなんですが、もし今回の事件がジャニーズでなく、ハロプロだったらと考えると、ショックというか、強い怒りを感じていると思うんです。もし、ハロプロの元タレントから“暴露本”が出版され、それを記事として扱うことになったら……正直どんな内容にするかは全然わかりませんが、ただ、ジャニー氏の記事のように、軽いノリでは触れない気がします。

B 私は「娘が父親から性虐待を受けていた」といったニュースが報じられるたび、加害者に対して血管が切れそうになるくらいの怒りを覚えるんですが、正直ジャニー氏に対しては、いまだにそこまでの憤りは感じていないんです。それを客観視して、「あぁ私はまだ軽く捉えているんだな」と怖くなります。でも、そもそもあの“暴露本”、最近多数の媒体で出ている性被害告発記事もそうですが、行為の内容が詳細に書かれすぎじゃないかという点は、やっぱり気になります。

C 被害者が未成年の女性アイドルだったら、ここまで生々しいことは書かないのでは……というのは疑問ですよね。

A KinKi Kids・堂本光一の単独会見で「自身は性被害に遭ったのか?」との質問があったと本人が明かしましたが、これも未成年の女性アイドルにマスコミは同じことを聞くのか? と疑問を覚えました。結局、この質問は事前に却下されたそうですが。

B サイゾーウーマンの“暴露本”記事のタイトルにもいえることですが、マスコミ全体、社会全体の同性愛嫌悪、また特に男性の性暴力被害に関する知識のなさが露呈しているのかもしれません。

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