コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験、小6秋の模試で「合格率20%以下」――「親が第1志望校を変更」の過去を引きずる28歳女性

2023/10/14 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

umiiさんによるphoto ACの写真

 いよいよ秋本番。2月1日から始まる東京・神奈川私立中学入試までは、残すところ4カ月を切り、小学6年生は正念場を迎えている。

 受験する中学校のラインナップを、そろそろ最終決定しなければならない時期に差し掛かっているが、中には、第1志望校合格への自信が揺らぐご家庭もあるだろう。

 この「第1志望校変更」については、多くの受験関係者が「慎重に」と助言している(もちろん、筆者もだ)。

 というのも、受験とは、高得点順に「合格」という扉が開くシステムだが、その扉をこじ開けるために一番大きな原動力となるのが「モチベーション」だから。

 中学受験は、平均3年間の準備期間を経て行うもの。賛否両論あれ、小学生に長期間に及ぶ過酷な勉強を課すことは事実だ。極論すれば、彼らの多くは「第1志望校に行きたい!」というモチベーションだけで、この長い時間を勉学に費やしている。それなのに、親であれ、塾の先生であれ、“自分以外の他人”が、「合格の可能性が極めて低いので、第1志望校は変える」と決定したとしたら――。

 その瞬間、本当の意味で、受験生にとっての受験は「終わる」と筆者は思っている。

 人は、たとえどんなに幼かろうが、自分の進路は自分の意思で選択すべきではないだろうか。

 知り合いである亜衣さん(28歳・仮名)が先日、近況報告としてメールをくれた。会社を退職し、語学留学でカナダに来ているという内容だった。

 彼女は中学受験を経て、偏差値50台(当時)の中高一貫校に入学。学校推薦でMARCHの一つである大学に進学した。卒業後は大手金融機関に一般職として入社し、傍から見れば、何不自由なく、順風満帆な人生のように見受けられた。

 ところが、亜衣さんはこう言うのだ。「親から押し付けられる人生は、もうコリゴリ!」と。

 彼女のメールによると、そもそも中学受験は、「自分がしたくて始めたものではなかった」という。親――特に母親は、模試の結果次第で機嫌が大きく変わり、いつも親の顔色を見るように勉強をしていたと、彼女は当時を振り返る。

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