中学受験、小6秋なのに志望校が決まらない! 焦った母が取った行動と待ち受けた“サプライズ”
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
「すべては志望校合格のため!」と、日々難問に取り組んでいる中学受験生たち。人間のやる気には動機が必要だけに、志望校という目標が定まっていると、頑張りが利くという面は確かにある。しかし、受験生全員が早い段階から第1志望校を決めているわけではない。中には、小学6年生の秋になっても、志望校が決まらないと焦っているご家庭もあるだろう。
現在、私立中学2年生の愛華さんの母・友美さん(ともに仮名)は、「今だから言えることなんですが……」とおもむろに話し始めた。
「愛華は中学受験の時、いつまでたっても志望校が定まらなくて、焦りました。愛華の兄が受験生だった時は、本人が『絶対にここに入る!』と決めた学校があったので、ある意味、楽だったんです。その学校を目指して対策すればいいだけなので……。けれども、愛華の場合、『どの学校がいい?』と聞いてもピンと来ないみたいで、『どこでもいい』と言う始末。過去問対策が本格化する6年の秋になっても、そんな状態だったので、何をどう取り組めばよいのかと、途方に暮れました」
というのも、愛華さんが受験生だった頃、世はコロナ禍真っ只中。これから本格的に受験を頑張らなければ! という小5の春に緊急事態宣言が発令され、小6の1年間は、新型コロナウイルスが最も猛威を振るっていた時期だったという。世の中全体が落ち着かず、塾も学校説明会もオンラインになる中、愛華さんの心理的な不安は増す一方。志望校を選ぶことに後ろ向きになっていたとしてもおかしくない。
「愛華の兄は男子校しか受験しなかったので、私には女子校どころか共学校の情報すらも持ち合わせがなかったんです。おまけにネットが不得手で、人数を絞った説明会の申し込みには手間取ってしまい、ようやく気になる学校を見つけても、すでに『満席』なんてことが何度もありました。『私のせいで、学校情報がまったく集められない!』と気持ちはドンドン沈んでいきました」
中高一貫校は都内だけでも200校近く存在している。当然だが、進学する学校は一つ。現在は1人に対し平均4.98校に出願し、3.68校を受験していると言われている(栄光ゼミナール調べ)が、受験日程は限られているので、厳選して受験しなければならないことは明白だ。それゆえ、親子で「絶対に行きたい学校」を中心に併願作戦を練り上げていかねばならない。
候補となる学校を決める際には、参考資料として、「通学距離」「偏差値」「共学か別学か」「進学校か大学付属校か」「学校の教育方針」「校風と子どもとの相性」「大学合格実績」「受験日程」といった項目を調べていくことがセオリー。
これらを吟味しながら、実際に説明会などに参加して、徐々にターゲット校を絞っていく作業を行うのだが、コロナ禍で親たちのフットワークは鈍りがちに。友美さんのように、学校情報が集められずに嘆く親が続出していたのである。
「そうこうしているうちに、ついに小6の10月がやって来ました。志望校の過去問をそろそろ始めないと……という時期です。オンライン説明会には、どうにか潜り込めるようになったんですが、母娘共々、『ここもいい』『あそこもいい』というよりは『どこもイマイチ、ピンと来ない』という学校ばかりで、ますます落ち込みました」
コロナ禍前までは、学校説明会に出向いたり、学園祭などの学校行事を見学したりすることで、学校生活をリアルに感じ、わが子に合う、合わないを体感できていた。しかしオンライン説明会では、なかなかその学校の空気を感じることは難しいので、愛華さん、友美さんの悩みはもっともだと思う。