仁科友里「女のための有名人深読み週報」

マツコ・デラックスの「出身地イジリ」に乗らなかった梨花が“理解していたこと”とは?

2023/08/03 21:00
仁科友里(ライター)

私たちの心のどこかを刺激する有名人たちの発言――ライター・仁科友里がその“言葉”を深掘りします。

マツコ・デラックスの画像
自虐ネタはもう厳しいマツコ・デラックス(C)サイゾーウーマン

<今回の有名人>
「また曳舟ってのがいいのよ」マツコ・デラックス
『マツコ会議』(7月29日、日本テレビ系)

 7月29日放送の『マツコ会議』(日本テレビ系)にモデルの梨花がゲスト出演した。お子さんの教育のためにハワイに移住したこともあって、若い世代にはあまりなじみがないかもしれないが、梨花はカリスマモデルとして数々の女性誌の表紙を飾りつつ、過度の束縛癖のために恋愛が続かないなどと自分の恋愛事情を赤裸々に語るぶっちゃけキャラがウケて 、『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)など2000年代初頭~中頃 のバラエティ番組で大活躍していた。

 『マツコ会議』のMCマツコ・デラックスと梨花は直接仕事をしたことはないが、同い年ということもあって、話は盛り上がるだろうと思っていた。しかしマツコの「出身地イジリ」がどうも気になったのだ。

 マツコは「私は(梨花が東京都墨田区の)曳舟出身だってことは、存じ上げていた」「私は下町パトロールだから。下町のどこから、誰が出てきているか(を把握している)」「また、曳舟ってのがいいのよ」「曳舟のオンナがあんなにきれいになってねぇ」と、結構しつこく「曳舟」を連発。スタジオ内ではそれほど笑いが起きず、芸達者な梨花もそこを広げない。それは、今の時代、このネタが“アウト”だとマツコ以外の人は気づいていた からではないだろうか。


 梨花がバラエティ番組で活躍し、マツコもテレビに出だした2000年代半ば 、「勝ち組負け組」「負け犬」といった言葉がはやっており、人を「勝ち負け」で判断する意識が強かったと思う。資本主義の世の中だから、勝ち負けの基準はカネであり、高収入、親がお金持ち、高級住宅街に住んでいる、 高級ブランドで身を固めている人は「勝ち組」と言われたものだ。

 この理論で言うのなら、地価の安いところに住んでいる人はそれだけで「負け組」になる。「あなたは負け組ですね」と言われてうれしい人はいないだろうが、逆転の発想で、「私は負け組です」と自虐的に振る舞うと、相手も攻撃してこないし、笑いが生まれるという利点があった。

 マツコは2000年代半ば、コメンテーターを務める『5時に夢中!』(TOKYO MX)で、千葉出身であることも含め、自身の身の上を自虐しながら、地価の高くない土地イジリを頻繁に行い、笑いを取っていたと記憶している。