インター校からの中学受験は簡単ではない――英語コンプレックスを息子で解消しようとした母の告白
さらに、渚さんに追い打ちをかける事態が発生した。それは、中学受験塾の入塾テストに落ちたことで判明したそうだ。
渚さんによると、インター校にいる日本人生徒の多くは、中学に進学する際、地元の公立中ではなく、中学受験をして私立中に行くか、そのままインター校に通うかの選択をすることが多いらしい。そこで渚さんは、小4時での中学受験塾デビューを見越し、試しに入塾テストを受けさせたのだという。しかし――。
「テスト結果を見て仰天しました。岳が完全にセミリンガルになっているということがわかったんです。インターは、算数や理科のレベルが低いとは言われていたので、それはある程度は覚悟していたのですが、国語も壊滅的な成績で頭を抱えました。日本語も英語もどっちも中途半端にしか理解できていないという事実に打ちのめされましたね」
日本のインター校の多くは、学校教育法上の「一条校」には入らないので、扱いとしては各種学校か無認可校となる。中学受験を経て入学する中高一貫校は「一条校の卒業」を条件にしていることが多く、帰国生は話が別だが、インター校の生徒は、そもそも志望中学に受験資格があるのか否かを丁寧に見ていかねばならない。
現在は、インター校でも受験資格ありを謳っている中学も複数出てきてはいるが、岳君が中学受験を受けた頃は、ほとんどない時代だったと記憶する。
結局、渚さん親子は「一条校の卒業」という条件を満たすため、インター校を辞めて、日本の公立小学校に転校。岳君が小5の頃だったそうだ。
「本人もインター校にはもう通いたくないと言っていたので、それじゃあ、日本の学校に転校して、中学受験をしようという話になったんです。入塾テスト前後は家庭教師をつけて、必死に頑張らせました」
ところが、日本の公立小にも、岳君はうまくなじめなかったそうだ。
「うまく説明できないんですが、インターと日本の学校教育は大きく違うんです。インターで良しとされることが、日本の小学校ではダメみたいな……。それが、明文化されておらず、先生から、いわゆる“空気読め”的な対応を取られたようで、公立小にはほとんど通えず。岳は中学受験塾にだけ通う状態になっていました」
岳君はその後、進学校とされる中高一貫の男子校に入学する。
「その頃の岳の夢は『医者』だったので、医学部に強いとされる一貫校に入れたんですが、そこがまた結構、厳しい学校でして、岳には合わなかったんだと思います」
一口に私立中高一貫校といっても校風はさまざま。「公立よりも自由」というイメージを持つ人もいるだろうが、実際には、提出物や遅刻に厳しく、生徒からすると「窮屈だ」と感じる学校も少なくないのだ。
「それでも、中学では生徒会に立候補して、『俺が校則を変える!』と大きなことをブチ上げていたんですが、先生の逆鱗に触れ、目を付けられるように。また部活の先輩・後輩の序列がまったく理解できなかったみたいで、そのこともあり、部活も辞めました。学校には行っていましたが、当然、成績も悪かったです。まあ、英語だけはプライドがあるのでしょうかね……そこそこマシな点数でしたが、だからと言って、高偏差値大学のレベルには到底及びませんでした」