コラム
佃野デボラのホメゴロシ!

『夕暮れに、手をつなぐ』、北川悦吏子作品あるあるを徹底解説――令和とは思えない“昔懐かしさ”の正体

2023/03/25 16:00
佃野デボラ(ライター)

 ……とまあ、北川作品の“魅力”は枚挙にいとまがないのだが、大先生の「依代三部作」と言える『半分、青い。』『ウチの娘は、彼氏ができない!!』『夕暮れに、手をつなぐ』の3作を並べてみると、前2作に比べて今作は、ややパンチが弱いと言わざるを得ない。

 先述の通り、スタッフによるコンプライアンスチェック(ただし、かなりザル)と「調整」が入った形跡が見て取れ、北川作品本来の「持ち味」が、多分に中和されていると感じた。「広瀬すずと永瀬廉に花火かシャボン玉をさせて、スローモーションをかけときゃ、どうにかなるだろう」という「臭み消し」の映像処理も、作品の「中和」に一役買っていた。

 今作において、くさややシュールストレミングのような、北川大先生にしか出せない味わいが稀釈されていたのは残念なことで、大先生本人も、渾身の台詞がカットされたことをわざわざ固定ツイートにして嘆いている。その台詞とは、例の「炬燵でじゃれ合うシーン」で音が空豆に向けた、

「月帰んなよ、かぐや姫」

というものだそうだ。こんなクソダs……いや、味わい深い台詞、“ファン”としては是非とも残してほしかった。
 
 ともあれ、『夕暮れに、手をつなぐ」は、令和の今に“懐かしさ”をもたらしてくれる、類稀な“ノスタルジック・エンターテインメント”と言えるだろう。「多様性の尊重」「恋愛至上主義の終幕」という時代の空気に真っ向から立ち向かう北川作品が、これからどんな展開を見せるのか。大先生の「ダチョウ倶楽部しぐさ」の動向とともに、見守っていきたい。

※《》内はすべて原文ママ。


佃野デボラ(ライター)

ライター。くだらないこと、バカバカしい事象とがっぷり四つに組み、掘り下げ、雑誌やWebに執筆。生涯帰宅部。

最終更新:2023/03/25 16:00
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