「闇金王国」はどのように最期を迎えたか? 金に執着した社長の情けない姿
退社されてから不動産会社を興した佐藤さんは、ある程度、時間の自由が利くそうで、不法行為には関わらないことを条件に、社長が保釈されるまでの間に限って手伝ってくれることになりました。取り急ぎ、態度を急変させた客への対応について相談したところ、とにかく刑事告訴されないことを一番に考え、民事での和解を促すべきだと進言されます。
「費用もかかるし書類集めも大変だから、本気で訴えてくる客は、そんなにいないと思いますよ」
結局、訴訟まで起こしてきたお客さんはなく、思いのほか簡単に事態を収束することができました。
「心配かけて悪かったな」
逮捕から3週間ほど経過した後、600万円の保証金を支払って保釈された社長は、随分と痩せた状態で事務所に現れました。留置場における日々が思いのほか厳しく、精神的に参ってしまったらしく、毎日の食事も思うようにとれなかったそうです。保釈されたことを聞いて、事務所に駆けつけた佐藤さんから留守中の報告を受けた社長は、入出金状況の照合をした後に50万円の現金を用意するよう言いました。それを佐藤さんに手渡して、これからも手伝ってもらえるよう懇願すると、違法行為には携わらないことを条件に快諾されます。
先に逮捕された2人は、前日に保釈されており、明朝に出社される予定だと聞きました。不正行為が発覚している件は、なにひとつ伝えていないそうで、修羅場になること必至の状況といえるでしょう。
「あいつら、ふざけやがって。本当に舐めているな」
翌日、事件のきっかけを作った2人の社員は、約束の時間が過ぎても姿を現しませんでした。その代わりに弁護士から介入通知が届いて、退職の意思表示と合わせて、法廷における全面対決の意向が伝えられます。
2人ともに、会社の指示で仕方なくやったと供述しており、完全に裏切られた形となりました。不当に受領していた金利も、そもそもの貸付契約が違法のため、返還を求めることすらできません。刑事裁判の成り行きも気になるところで、従業員の立場にいた2人に口裏を合わせられているため、社長一人が不利になる様相になってきました。はっきり言ってしまえば、いいようにやられてしまっており、今後の展開が不安になります。