「金を返さないまま死んだら成仏できないぞ」病院での取り立てで社長逮捕……闇金王国がついに崩壊へ!
廃棄するべく、社員2人の机上に残された食べかけの総菜パンを手に取ると、朝に食べたきり何も食べていないことを思い出しました。軽く掃除を済ませて、事務所近くの中華料理店に入り、お酒を飲みながら食事を取ります。食事中は、もっぱら取り調べの話題で、担当の刑事に聞かれたことを照合しました。
「金利のことと取り立てのことが中心だったけど、ヤクザ関係の話をしつこく聞かれて困ったわよ。名前と顔は知っているけど、どこの組の人かなんて、1人もわからないから」
「そうですよね。私は、社長との関係を勘繰られて、なにか預かっているものはないか執拗に聞かれました」
「へえ、そんなのあり得ない話よね。るりちゃんは、若いから仕方ないか」
「彼氏もできたことないのに、社長の愛人だなんて、ひどい話ですよ」
いつもよりお酒が進みましたが、ドラマのような1日を過ごして興奮していたらしく、少しも酔うことはありません。先のことを考えると夜も眠れず、そのまま朝を迎えてテレビをつけると、しばらくして見覚えのあるビルが映し出されました。
昨日、会社に強制捜査が入り、社長たちが逮捕されたことが報道されていたのです。それによると当該事件のほか、某指定暴力団の企業舎弟であると警視庁に疑われているそうで、さらに詳しい調査が進められるとのこと。それが事実だとしても驚きはありませんが、そうなれば私自身も暴力団関係者になってしまう気がして、とても嫌な気持ちになりました。
正直に言えば、もう退職したい。そんな気持ちにもなりましたが、愛子さんだけを残して辞めるわけにもいきません。社長が帰ってくるまでの間は、細かいことを気にしないようにして、通常通り朝一番の出勤を続けることに決めました。
※本記事は、事実を元に再構成しています
(著=るり子、監修=伊東ゆう)