中学受験「第1志望校の不合格」を我が子にどう伝えるか? 合否発表でパニックになった母は、塾に電話を……
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
いよいよ今年も「2月1日」がやって来る。東京・神奈川の中学受験生にとっては決戦の始まりの日だ。例年、この1週間、多くの受験生は午前・午後と入試を受け続けるという超ハードスケジュールをこなすことになる。同時に合否という“運命の分かれ道”が次々と判明していくとあって、過酷な日々となるのは間違いない。
合否が発表されるのは試験当日の夜か翌日の午前中というケースが多い。その時間、我が子は入試の真っ最中ということもあり得る。結果次第で、スケジュールが大幅に変わることがあるので、親が先に確認して、試験終了後の子どもに伝える場面も少なくない。
合格ならば、親子ともども満面の笑み。しかし中学受験は、第1志望校に合格できる子は「3人に1人」ともいわれている。残念な結果を親自ら我が子に伝えねばならないこともあるのだ。
2月2日の午前9時、B中学近くのカフェで、麻衣子さん(仮名)はスマホの画面を見てフリーズしていたという。息子・歩夢君(仮名)の本命校A中学の入試結果を見たのである。
「ウソでしょ? 歩夢が不合格? あんなに頑張っていた歩夢が? なんで?」
歩夢君は低学年の頃より塾に通い出し、A中学を目標に日々努力を重ねていたという。塾の先生たちが「歩夢ならA中学は間違いなし!」と太鼓判を押すほど、成績には問題がなく、麻衣子さんも合格を信じて疑っていなかったのだ。
こらえきれずこぼれ落ちる涙とはまた別に、頭の中では「どうしよう……。歩夢に何て伝えよう……」という悩みが駆け巡っていたそうだ。
その時刻、歩夢君はB中学の入試を受けていたが、A中学の結果次第で、その日の午後、C中学の入試を受けるか否かを決める手筈だった。
歩夢君は昨日のA中入試、今日のB中入試と、すでに2日連続で受験している。精神的にも身体的にも疲れが出る頃合い。それなのに、不合格を告げられた足でC中学に向かわなければならない事態に陥ったというわけだ。
麻衣子さんの計算では、2月2日にA中学合格で受験終了となるはずだった。B中学は、A中学よりも偏差値が高いために、どちらかといえばチャレンジ受験だったそう。そこで万が一を考えて、C中学にも出願していたそうだ。
「正直、想定外でした。2月1日のA中学は合格できるだろうとの予測だったんです。C中学には出願していましたが、受験することになるとは夢にも思っていなかったので、気が動転していました。どうしていいかわからず、その場で、塾に電話したんです。そしたら、室長先生が開口一番『お母さん、勝負はこれからです。歩夢はこの試練を必ず、乗り越えます。冷静になりましょう』と言ってくださって。なんか、その言葉で心が落ち着いたんです……」