コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

“天皇の主治医”めぐる問題とは? スキルより重視される「伝統」……庶民以下の医療体制

2023/01/14 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

――それはすごく問題のような……。ひょっとして、侍医に求められている条件は医師としてのスキルとは別のなにかなんでしょうか? 天皇を長年診てきたのだという侍医の持つ「伝統」が、天皇家のプライベートスペースである「奥」では重視されてしまうとか?

堀江 はい。「天皇陛下は私たちのものだ!」という侍医団が、森岡教授から陛下を取り戻そうとした結果だという見方もできるかもしれませんが、実際は、余命わずかと推測される天皇のターミナルケア(=終末期の緩和ケア)を、部外者である自分より、陛下が長年、慣れ親しんだ宮内庁の侍医たちに任せるのが最善と森岡教授もお考えになったのでは、などとも推測されます。

 もちろん患者の症状について承諾もなく公表することは、医師としてできないから、例の「執刀記」などでは肝心の部分に沈黙を貫いたということですね。

――「浜尾実元東宮侍従と河原敏明(皇室ジャーナリスト)が究明する『宮内庁側近の弊害!』」(「アサヒ芸能」1988年10月13日号)という記事には、浜尾氏の見解として「むしろ、われわれ庶民のほうが病気の際には、より自由で機敏な処置を受けられる。皇族方は逆に、ご不自由であるといった逆転現象」が指摘されています。

堀江 実際、先日も宮内庁の発表で、われわれは天皇陛下が前立腺の検査を継続的にお受けになっていた事実をはじめて知ったわけですが、昭和期よりは、より適切な医療、検査を現在ではお受けになられていると願われてなりませんね……。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2023/01/14 17:00
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