コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

“天皇の主治医”めぐる問題とは? スキルより重視される「伝統」……庶民以下の医療体制

2023/01/14 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江 記事を見た限りでは、それについての情報は見つからずじまいでした。「文藝春秋」(文藝春秋、87年12月号)に掲載された森岡教授による「執刀記」という記事も読みましたが、例の手術の「成功」後、陛下が危惧された合併症を起こすことがなかったので、これにて「苦心した外科医(=森岡教授)と医療チームの仕事は、ともかく終わった。今は陛下が末永く御健康であられるように願うのみである」と発言、自分の関与はこれで完全に終わりであるような口ぶりなのは事実です。

――成功したという手術でも、結果として昭和天皇の「がん」を完治させうる手術ではなく、「がん」の進行を食い止める程度のことしかできなかったわけですよね。「外科医」として自分にできることはもうないから、お会いできない……ということだったのでは? とも思ってしまいます。

堀江 そうですね。ですから、右翼からの報復云々という河原氏の推測は間違っていたと思います。ただ、陛下にはいくらなじみがあるとはいえ、当時の侍医団の手にまた任せてしまって、「それで良し」としてしまったのは、かなり思い切った決断だったようにも思いますね。

 診察中、立ってもいられないほど健康上の問題がある高齢の侍医も、“天皇の主治医”でありつづけられたというような事例があるらしいですから。

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