コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

「昭和」最後の日、天皇崩御時の報道フィーバーと「自粛」空回り―日本中の異変からわかること

2022/12/31 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江 しかし、この元号の発表にも実は驚きの事実が隠されているのです。「FRIDAY」(講談社、88年10月7日号)では、昭和天皇が同年9月19日深夜に大量吐血なさったことをうけて、輸血用の血液輸送車が到着、現・上皇さま、上皇后さまが車で皇居にかけつける様子を記事にしているのですが、この時、「陛下『重体』の情報が流れはじめた。政府も『万一の自体に備えて』、ついに『新元号』の検討を始めた」とあるのです。

――新元号の検討開始が、昭和天皇がご存命中なのに、世間に宣言されてしまっているのですね! さすがに失礼な気もします。

堀江 「アサヒ芸能」(88年10月6日号)によると、「天皇陛下のご容体が急変した翌朝(9月)20日、政府は早くも新しい元号を決める準備作業に入った」として、「政治部記者」が「実は、新元号の候補案はもうできあがっているんです。3案あって、首相官邸の金庫の中に封印されて入っている」と明かしています。

 そして、「昭和」が決まったときのように宮内省ではなく、政府が主導して選定に尽力ともあります。政府筋にも、昭和天皇が末期がんであるという情報は入っていたと思われます。だからこそ、このタイミングでの元号選定開始が試みられたのでしょう。

 しかし、依然として宮内庁は本当の病名を隠しつづけたのは、たしかに不条理な気もしますよね。秘密主義と叩かれても仕方ないというか。しかし、改めて考えると、当時の宮内庁には「そうするしかなかった」……そういう気もしてきたのです。

――次回につづきます。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2022/12/31 17:00
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