中学受験、塾費用は「月20~30万円」が平均の時代に? 共働きママが「狂気を持ったATM」と化すのはなぜか
――莫大なお金をかけ、大人に管理されてどうにか難関校に入っても、入学してからいわゆる深海魚(成績が深海に沈む生徒)になるんじゃないかと心配になります。
杉浦 取材すると、そうやって親や個別指導塾に管理され、勉強をさせられてきた子が中学で成績が振るわないかというと、そうでもないんですよ。
反対に地頭がよくて、たいして勉強をせずに御三家に合格する子もいて、そういうタイプこそ中学以降、成績が低迷することがあります。中学以降の勉強は単純作業、つまり暗記が増えます。英単語や数式を覚えるのに地頭のよさは不要で、いかに地道な努力をするかが重要なんです。そうなると地頭のいい子より、大人に管理されつつも学習習慣がついている子のほうが有利になります。
――親や塾に鞭を打たれて勉強してきた子が、中学以降に自立することもありますしね。
杉浦 そうですよ。小学生は自分から勉強しないのが普通でしょう。以前、御三家から塾なしで東大に現役合格した人たちを取材しましたが、「中学受験の時は母親が鬼軍曹のように厳しく見張ってた。泣きながら勉強をした」という話もありました。でも、高校生になると自学自習の達人に育ったわけです。だから、課金したり、親が横に座ったりして、管理して勉強をさせることが一概にダメだとはいえないように思います。
――しかし、メインの集団塾に3年間通うだけで250万円前後もかかるのに、ほかの塾に通わせるとなると、経済的な負担は大きいですよね。
杉浦 今は過渡期なんじゃないでしょうか。現状、大手塾が働くママにサービスを合わせていないので、大人が宿題を管理しなければならず、結果、共働き家庭は個人指導塾代がかさんでいるわけですが、今後は変化していくでしょう。大手塾もサービスを強化していますし、少数制の面倒見のいい塾も増えてきていて、それらについても本の中で紹介しています。
たいていの保護者さんが「終わってからこんなに使ってしまったと気づく」と話されます。ですから、最初の段階でどの程度の費用をかけるか見積もりをして、決まった予算の中で入れる学校に進学するというのも作戦だと思います。偏差値と学校の質は全然関係ないですからね。
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)
ノンフィクションライター。会社員や専門学校講師などを経て、2005年からライターとして活動を開始。『女子校力』(PHP新書)、『ママの世界はいつも戦争』(ベスト新書)など著書多数。
【著書紹介】
『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)
中学受験は、子どもと家庭に合う「塾選び」が成功の鍵を握る――首都圏・関西の大手から中小塾、話題の単科塾、個別指導塾まで最新情報を徹底取材。先輩パパ・ママの塾選び失敗談から、四大塾(サピックス、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミー)の実際、難関校に強い塾などを解説する最強の塾ガイド。