中学受験、塾費用は「月20~30万円」が平均の時代に? 共働きママが「狂気を持ったATM」と化すのはなぜか
――本書には、個別指導塾以外に単科塾の話題も登場します。これもメインの4教科を学ぶ集団塾と併行して通うんですよね。
杉浦 本書の中で取り上げた単科塾はどこも大人気です。フォトン算数クラブは小2から算数の受験対策を始め、直井メソッドは個別指導で国語対策、アルファ実験教室は理科の単元を実験で学びます。
要は大手塾で足りないところを補強する塾がバラエティに富みつつ増えているんですよ。取材すると、どこも魅力的で私も子どもがいたら通わせたいくらい。国語の専門塾で読解力を鍛えておけば、本を読むといった娯楽も増えますしね。
――そうすると塾代は二重三重にもどんどん膨らみますね。日本人の給与は30年上がっていないのに、塾代が膨らんでいくのは不思議に思えますが。
杉浦 給与は上がっていませんが、共働き家庭は増えていますからね。授業料が高い個別指導塾を取材したら、生徒さんはほとんどが共働き家庭の子だとのこと。中学受験をテーマにしたマンガ『二月の勝者-絶対合格の教室-』(高瀬志帆氏、小学館)の冒頭には、中学受験合格に必要なのは「父親の『経済力』そして、母親の『狂気』」とあります。10年前は確かにそういうご両親が多かったです。お母さまは基本的に主婦業をメインとしていて、塾代のためにパートに出るという感じで。
しかし、首都圏では、出産後の女性が正社員のままで働き続けることが普通になってきました。そうなると男性と同等の経済力を持つお母さまたちが増えてきて、「狂気を持ったATM」になることもしばしばあります。
個別指導塾の腕のいい講師たちは最初の3カ月でまず成績を上げますからね。そうなると「もう1コマ増やしたらもっと成績が上がるかも」と思っちゃいますよ。そうやって課金額が上がっていくと、「ここまで頑張るなら、近所の偏差値55ぐらいの学校ではなく、もう少し上の学校を狙いたい」と考え出してしまうんです。