今期でもっとも攻めてるドラマ

長澤まさみ『エルピス』はテレビ業界のリアル? 実際の関係者の目にはどう映ったのか

2022/10/28 11:00
村上春虎(ライター)

『エルピス』実際に冤罪事件の特番は難しい?

 そんな拓朗と恵那は、村井に冤罪事件についての特集を放送させてくれと願い出るも、村井からあっさり突っぱねられた上、こう口撃される。

「お前な、闇、闇言ってっけど、じゃあ闇ってなんなの? その奥になにがいんの? 言えるか? 言えねぇだろうがよ! 闇にあるもんってのはな、それ相応の理由があってそこにあんだよ。お前らごときがオモチャみてぇな正義感で手出していいようなことじゃねぇんだよ。冤罪を暴くってことは国家権力を敵に回すってこと。わかる?」

 だがこの後、恵那は「わかりません」「わかりたくありません」と歯向かい、国家権力に立ち向かう覚悟を示す。スキャンダル後、色のない生活を過ごしてきた恵那の心に火がともっていく過程を、長澤がうまく演じていた。

「実は自分も、以前、冤罪事件を取り上げるスペシャル番組をやりたくて、過去の冤罪を検証する企画書を出したことがありました。ただ、出した相手が報道ではなくバラエティ班の人間だったので、『難しい』と言われてそれっきりです。実際、そうした重厚なテーマを放送できる枠が限られていることもあり、タイムリーな冤罪事件が起きない限り、そうした特集・特番は見られないと思われます。なにより村井の『お前らごときが――』という台詞は胸にグサッときましたね。恵那と拓朗にはぜひ、真実にたどり着いてほしいです」(同)

 初回の世帯平均視聴率は8.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と1桁台にとどまったが、本当に面白い作品であれば2話以降、着実に数字は伸びてくるだろう。今後に期待したい。


村上春虎(ライター)

村上春虎(ライター)

1976年生まれ。バラエティ番組や情報番組などテレビ番組の制作に携わる傍ら、現場で見聞きした情報やリサーチしたネタをネット記事で放出する。

最終更新:2022/10/28 11:00
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