コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

エリザベス女王の棺の中は……ヨーロッパ王族に流行した、国王の特殊な埋葬方式とは?

2022/10/08 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江 9日に亡くなり、埋葬……というか、ウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂の地下に棺が安置されるまで約10日。いくら特注品の棺で、その内部は鉛張りで完全に密閉されているとはいえ、不安があるのはわかります。

 女王のご遺体の保管法について、英王室の広報官の発表はこの後もないでしょう。ですから、これから述べることは私個人の見解にすぎませんが、中世からヨーロッパの王族、ときには貴族の間でも流行した「三分割埋葬」と呼ばれる特殊なエンバーミングの一種が女王にも施されていたのかもしれません。当地ではラテン語で「Mos Teutonicus」などと呼ばれる方式です。

――それは一体、どんなエンバーミングなんですか? 

堀江 中世ヨーロッパ……とくに当時のイギリスとフランスで人気を呼んだ手法なのですが、国王が亡くなると、すぐさまそのご遺体から心臓、内臓を取り除いてしまうのです。内臓はアルコールで満たされた容器の中で保管するのですね。古代エジプトのミイラづくりでも、腐敗が始まる前に大急ぎで腐りやすい内臓を体から除去することが重視されたのですが、ある意味それと少し似ているかもしれません。

 一方で、12世紀のイギリス国王・リチャード1世(リチャード獅子心王)が亡くなると、彼の心臓はアルコール漬けではなく鉛の箱に納められました。その調査が近年行われていて、それによるとリチャード1世の心臓は、一度乾燥された後、デイジーやミント、ギンバイカの葉といったハーブ類やフランキンセンス(乳香)、そして水銀を使っただけにもかかわらず、腐敗せずにミイラ化して残っていました。

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