『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』母の願い「家族一緒に」は、子の負担にもなる「ボクと父ちゃんの記憶2022後編 ~18歳の夢 家族の夢~」

2022/09/26 18:35
石徹白未亜(ライター)

 

写真ACより

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月25日の放送は「ボクと父ちゃんの記憶2022後編 ~18歳の夢 家族の夢~」。

あらすじ

 千葉県南東部、緑豊かな睦沢町で暮らす林家。高校3年生の息子・大介は、若年性アルツハイマー型認知症になった父親を日常的に介護している「ヤングケアラー」だ。

 大介の父親、佳秀はもともと東京で映像制作の仕事をしており、多忙な日々を送っていた。1999年に妻の京子と再婚、その後大介が産まれるも、2005年、50歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断される。

 病気の進行を遅らせるため、一家は自然豊かな千葉に越す。大介が幼少期のころは、普通の父親と変わらない様子で一緒に散歩や会話をしていたが、大介が中学校に上がるころから、佳秀の症状は目に見えて悪化していく。


 現在は家族と佳秀の会話はほぼ成り立たず、佳秀は家族の名前も思い出せない。トイレも一人で行けず、おむつをはいている状況で、仕事で遅くなる京子に頼まれて、大介が佳秀を寝かしつける様子も映されていた。

 京子は佳秀を施設に入れることを決断。別れの日、施設に向かう車の中で涙をぬぐう京子や大介の傍らで、事情がおそらくわからない佳秀はただニコニコしていた。

 その後、大介は高校卒業後に地元の造園会社に就職。将来的には農業をやりたいと話す。佳秀の症状が自然豊かな地で緩やかになった、という実感があるようだ。そして、初任給で施設にいる佳秀へ誕生日ケーキを贈る。

 林家は、佳秀と前妻との間にグループホームで暮らす知的障害のある娘と、大介の実兄にあたる、佳秀と京子の間に生まれた長男にも障害があり、病院で暮らしていることも伝えられた。

 21年の夏、佳秀を施設に預けて以来、感染症予防もあり家族は対面での面談がかなわなかったが、22年6月、京子はようやく対面を果たす。


『ザ・ノンフィクション』美談調ナレーションのモヤモヤ

 林家を取り上げた過去3回の放送は、ナレーションが美談調でモヤモヤする、と先週も書いたが、今回最後のナレーションもその調子だった。

「修行して一人前の農家になって、また父ちゃんと、家族一緒に暮らせる日まで、父ちゃんもう少し待っててください」

 実際大介は、番組内ではこのように発言していない。なんだかモヤモヤする、と思いながら見ていたが、これは大介の思いでなく、京子の思い、としたほうがフィットする。

ヤングケアラー 介護する子どもたち