コラム
【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

一晩で10人以上と交わり、射精は月に2回まで……天皇家に伝わる非現実的な「セックス書」とは?

2022/08/27 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

――平安時代でも、やっぱりスリムな女性しかモテなかったということでしょうか。

堀江 好みの個人差はあるでしょうけど、どんな体形もヨシとする「ボティポジティブ」の発想は、当時なかったと思いますよ。

 『源氏物語』には、朧月夜(おぼろづきよ)というお姫さまが出てきます。光源氏が「なまめかしう、かたちよき女(=艷やかな美人)」なんて珍しく褒めているので、おそらく体もグラマラスな女性が出てくるのだけれど、華やか、奔放、性的すぎる彼女は光源氏の本命にはなれず、最終的には捨てられちゃう存在ですから……。

 ただ、平安時代の日本でも本当に陰毛がない「白虎」の女性が喜ばれたかどうかはわかりませんねぇ。『源氏物語』を見ていても、「紫の上は白虎」なんて設定があるような気がしませんから。

――豊満な肉体は本命にならず、かといって、少女のように無毛が良いわけでもないんですね。

堀江 『医心方』「房内」の性知識……たとえば、男性が「接して漏らさず」=「ヤッてもイかない」などの行動理念は、江戸時代になっても現役だったんですけど、興味深いことに江戸時代の日本で喜ばれた女性器像と、『医心方』に書かれた理想の女性器像はかなり違うのです。

 たとえば江戸時代では、成人後も陰毛が生えない体質の女性は「かわらけ」などと呼ばれ、あまり喜ばれる属性ではないという考えが一般化していました。土を焼いただけの粗末な土器というのが「かわらけ」という意味ですからね。

 ガサガサの陰毛を荒野の雑草のように茂らせた女性は、江戸時代でもやはりダメだったみたいですが、ロリ系より、年相応に成熟した女性が好まれるようになっていました。要するに中国から性医学の知識を古代の日本は仕入れたけれど、その中でも生き残る知識と、淘汰される知識があったということです。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)。

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最終更新:2022/08/27 17:00
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