「闇金」新入社員のお仕事とは? 夜逃げして消えた子どもの友達対応に「胸が痛む」
昼休みに向けて、昼食の注文を集めるのは、私の仕事です。自由行動なので外に食べにいく人もいますが、出前を頼む必要があれば、その注文をする役割を担っていました。みなさんと言葉を交わすのは初めてのことで、名前を間違えないよう座席表を睨んでから、一人ずつ声をかけていきます。こういう時の順番は、年功序列。社長と営業部長は、愛妻弁当の用意があるというので、古株社員だという小田さんから注文を聞くことにしました。
「歓迎会じゃないけど、今日は外で食べようか。るり子さんの分は、おれがごちそうするよ。佐藤くんも、一緒にどう?」
「はい、ご一緒させていただきます」
お弁当を用意してきていたので、初めはお断りするつもりでいたのですが、佐藤さんが来るなら話は別です。持参のお弁当は夜に食べることにして、小田さん行きつけの小料理屋に連れて行っていただくと、オーダーを済ませるなり小田さんが言いました。
「社長の研修、どうだった?」
「初めて聞くことばかりで、ちょっと大変ですけど頑張ります」
「早口だから、なにを言ってるか、よくわからないでしょ? 大阪生まれの人だからか、ちょっとせっかちなんだよね。聞き返すと怒るしさ」
愚痴っぽい人なのか、社長の悪口のような話ばかりするので口をつぐんでいると、佐藤さんが言いました。
「るり子さんは、結婚してるの?」
「いえ、していないです」
「彼氏は、いる?」
「いるわけないじゃないですか、私なんかに」
あまりに恥ずかしくて、ちょっと強めに言ってしまったようで、テーブルに沈黙が漂います。空気を変えるべく、逆に質問をして、壊れた場を取り繕ってみました。
「お二人は、ご結婚されているんですか」
「おれは結婚して、子どももいるよ。佐藤は、まだだよな?」
「押忍、まだです。そろそろしたいですけどね」
佐藤さんは、独身。それを聞いて、少しうれしく思いましたが、すぐに長く付き合っている彼女がいると聞いて落ち込んだ次第です。
※本記事は、事実を元に再構成しています
(著=るり子、監修=伊東ゆう)